eラーニングの常識―誰でもどこでもチャンスをつかめる新しい教育のかたち (朝日選書)
- 作者: 森田正康
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2002/08
- メディア: 単行本
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もう一つの(慶応大学のSOIプロジェクトと並ぶ)先行例は早稲田大学だと思います。早稲田大学は99年4月、大学のデジタル化に取り組む産学協同組織「デジタルキャンパスコンソーシアム」を結成、2000年4月には、横河電機との折半出資で「早稲田大学ラーニングスクエア」を、同年10月には松下電器グループと共同出資で「早稲田大学インターナショナル」を設立するなど、90年代末から矢継ぎ早に遠隔講義に取り組みはじめました。
ウェブの構造は、教育目的と合わせて、一貫した方針のもとに構築する必要があります。ウェブに限らず、教育手段全体をこのような観点からコントロールする方法をインストラクショナルデザインといいます。
森田:結局、従来の教育の仕組みをそのままウェブに持っていっただけではいいものができない、というか、ウェブが入ってくることによって逆に旧来の仕組みがいかに一方的なものだったかが明るみに出てしまう。でも、たいていの場合先生は教授法を変えることには反対ですね。「自分の教え方が一番だ」と言われてしまうんです。インタラクティブ性なんてあんまり発想の中にない。
上田:教育学における授業デザインというのは、昔は学習者に達成させたい具体的な行動目標を明細化し、その実現のために最適なシステム設計をして、うまくインストラクショナルデザインを組み立てていくという発想だったんですが、これはゴールがはっきりしているときは有効なんだけど、はっきりしたゴールが設定できない場合は、この構図はくずれるんですね。むしろ先生と生徒、経営者と従業員が何をどうすべきか、一緒に考えようという、そっちの方がむしろ合理的な方向になってくる。
森田:先生も生徒も同じ学習者になっちゃえばいいんですよね。どっちが主役というわけじゃなく、どっちも学習のパートナーというふうに。/上田:パートナーであり常にメタレベルで状況のコントロールもしている、というのが理想ですね。
上田:どういうシステム、構造にして、どういうステップで学習経験をさせると一番教育効果があがるか、というインストラクショナルデザインは、インストラクションを作る側のものだったと思うんですね。僕はそれに対してコンストラクショナルデザインという言葉を使っているんです。/eラーニングがいままでの教育ツールとは次元のちがう可能性を持つツールだとすれば、学ぶ側もその特性を利用して、一人ひとりが学びのデザイナーになってしまえばいい。
2002年にでたこの本の前半部分は、今ではもう文字通り「常識」になってしまった感があるけれども、それでもeラーニングがどこから来たのかということをこの本で学んでおくことは、これからの方向性を考える上で必要なことだろう。
巻末の上田信行さんとの対談は、良い意味でぶっとんでいて楽しい。上田さん、最高。