KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

アメリカの大学院(続)

 昨日書いた、「アメリカでは同じ大学の大学院には行かない」ということについて、長谷川さんの日記読み日記で「ではハーバードからはハーバードにはいけないのか」という疑問が出されていた。タイミング良くハーバードの遠藤さんからメールをいただいた。遠藤さんありがとうございます。

Date: Mon, 21 Dec 1998 13:55:23 -0500
From: Yasuhiro Endo
Subject: Re: 大学院

以下は私の経験に基づくものであって、学校が同じでも、学科によって違う場合がありますのでご了承ください。

うちの学科は学士の卒論を必要としません。大学をを卒業する際に貰う賞で、上から順にスマ・カムラウデ、マグナ・カムラウデ、そしてクマ・カムラウデというのがあるのですが、これらはまず、成績によって割り当てられ、卒論を必要とするのはスマを目指す学生のみです。もちろん、成績が良くて卒論を書いたからといってスマが保証されるわけではありません。

余談ですが、ちゃんとした研究が出来る大学生というのはめったにいるものではありません(院生も最初の1、2年は使い物にならないのが普通ですから)。卒論を強要しないシステムというの、やる気が無い学生によって教授及び院生の研究が滞らないようにする良いシステムだと思います。

卒論をやる学生は、頻繁に教授、院生に接触して研究をやります。私の経験はこれらの学生に基づくものです。

というわけで、ここ6年半で(<げ!)頻繁にかかわりあってきたのが5人ぐらいいます。そのうち大学院に進学したのは1名。そいつはここに残るか、カリフォルニアバークレー校に行くか悩んだ結果、バークレーを選びました。

理由はやはり当校内の研究者だけと関わりあうよりも、他の環境で研究がどのようになされているか経験すべきという事でした。

そいつはすごく出来るやつで、ずっとうちにいて欲しかったのですが、教授共々彼にとって一番良い道はどれか?と考えた結果バークレーという事になったようです。

残りは大学院開始の前に数年間働くそうです。

実務経験は概ねプラスに考えられています。私も大学を出てから15ヶ月程働いていました。

さて、私の学科、現時点で博士課程の院生は20〜30人ほどいるのですが、大学がハーバードだった人間はその1割程度だと思います。(うちの学科では入学の時点で修士目的、と博士目的学生に分けられ博士課程にいる生徒は必ずしも修士課程を終了した学生ではありません)

というわけで、制度的に禁止されているわけではありませんが、大学院を選ぶにあたってはおなじ大学に留まらないのが一般的です。

Subject: もうひとつ

研究テーマについてですが、こういうのだったらありますが...
http://www.eecs.harvard.edu/ ̄margo/research/
私の指導教官のページです。
「私の下でこのような研究をしてみないか?」というかんじのページです。

 遠藤さんのメールで知った興味深いことは、卒論が必須ではないこと。これでやる気のない学生によって教員が煩わされないシステムになっていると。なるほど、アメリカの大学は選別システムとしてもよく機能しているのだなあ。入学させたからにはとことん面倒を見て卒業させる日本のシステムとは違う。どちらがいいとは一概に言えないけれど。ちなみに私のコースは卒論は必須。私も大学に来た意味は端的には卒論を書くことにあると考えている。

 それから、遠藤さんの指導教官のホームページにまさに「研究テーマリスト」がある。「Ph.Dのテーマにもなり得る」とも書いてある。参考になる。こういうのをやりたい。私が博士を取るのがまずやるべき仕事かもしれないけど。