KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

統計学の集中講義〜時間で切る思想

統計学の集中講義の三日間が終わった。今回はすでに看護婦(看護士)さんとして働いている人たちを対象にしていたので、二十歳台からおじさん、おばさんまで、まさに生涯教育という感じだった。

……成果はどうだった?

全員合格。分散、信頼区間、カイ二乗検定、t検定、相関を三日間でこなして、最終試験をやったんだが、全員3問中2問以上を正解していた。パーフェクトの人もたくさんいた。

……それはすごいね。

そうだね。統計学の単位が必修で落とせないということもあったのだろうけど、みんな熱心に勉強していた。四人のプロクター(アシスタント)も大忙しだった。私も忙しかったけど。でも、これで集中講義でもなんとかなるという感触はつかめた。

……というと?

統計学が嫌いな人は(たいてい嫌いなんだけど)、かえって集中的にやったほうがいいんじゃないかと思ったりした。去年の短大での統計学は通年でやったので、かえってだらけてしまった。それで、受講生の半数以上が単位を落とした。

……でも、三日間だとかなりハイスピードになる。ついていけない人もでてくるんじゃないか。

確かに遅い人はいる。でも「キャロルの時間モデル」が主張するように、どんなことでも理解できるだけの時間をかければ理解できるのだということが正しいことを実感できる。普通のおじさん、おばさんが「t検定」をやっているところを想像してごらんよ(差別に取らないでね)。なんだかすばらしい社会になりそうな気がするじゃないか。

……何かが理解できないのは、頭が悪いからじゃなくて、理解できるだけの時間をかけていないからだということだね。そして、何かを理解するために必要な時間は、それこそ個人によって違うのだと。それは個性の一部であると。

そう。理解するために必要な時間が個人ごとに違うのに、一斉授業をするのは不誠実だ。個別学習こそが解決策だというわけ。僕もそれを確信する。個別学習というと、なんだかパソコンの前に一人一人が座ってにらめっこするような、冷たい感じがするかもしれないけど、実際はまったく逆で、みんなわいわいと教えたり教えられたりしながら、にぎやかに進んでいる。にぎやかすぎるくらいなときもあるくらい。


……でも三日間では終わらない人もいるでしょ。

今回は内容をかなり厳選したんだけど、やはり予定以上の時間が必要な人もいることはいる。もう一日あれば全部をマスターできるだろうなという人もいた。でも、物理的な日程の制限もあるのでね。ここらへんは、キャロルの時間モデルを実現化するための工夫のしどころだろうね。

……キャロルの時間モデルを実現化するためには大幅な改革が必要なんじゃないの。

そうね。そもそも学期があったり、授業のコマ数が決まっているということがネックになる。このように「時間で切る」という思考方法から自由にならなくてはならないね。

……考えてみれば、人間の生活は時間で切られているね。何かを会得するまで時間を好きなだけかける、というのはもはや趣味の世界だけでしか実現できないことだ。勉強も仕事も時間で切られている。もちろんテストも時間で切られている。時間で切られていないことを見つける方が難しいくらいだ。

締切だけが人生なのだなあ。でも、何かに時間をかけてみようよ。時間をかけて僕らにできないことなんて、ないんだから。