KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

見通しがあれば辞めない

 夜空が晴れているので、放射冷却で気温が下がっている。これはひょっとしたら明日の朝は凍り付くかも。雪が10センチほど積もっているので、凍るといやだなあ。車が滑るから。

 富山は雪は多いが、それほど寒くない。日本地図を見れば緯度が東京とほぼ同じことに気づくだろう。気温が零下になることは少なく、したがって地下水を放水して雪を融かすということができる。もし零下になると道路が凍ってしまって、非常に危険だ。

 「朝の散歩道」の12/15で、会田雄次がこう言っていることを紹介している:

切るなら、有能な奴から切る。というのは理にかなっている。大学の先生でもそうだな。有能なのは大学の外に出ても何とか食っていく。有能なのを残して、能力のない奴を切ろうとするから、もめるんだ。

 これについて、「お気楽な日々」(12/20)はこんな話を紹介している:

リストラで仕事のできない人を切って、仕事ができる人ばかりになるかというとそうではありません。10人従業員がいて、2人は優秀な人、仕事ができない人は2人、あとの6人は普通の人で、この比率は仕事が出来ない人を切っても同じになるそうです。

その理由は仕事が出来ない人はそうでない人にとって、その人達のようにしてはいけないという悪い見本になるのです。その人達がいなくなると悪い見本がなくなり、努力とか工夫を怠り仕事が出来なくなってしまう人がいるそうです。

 なるほど、悪い見本か。僕らは良い見本からもたくさん学ぶけれども、悪い見本からも「ああなっちゃいけない」ということで学んでいるのかもしれない。反面教師ってやつだな。しかし、悪い見本になっている本人は、全然気づいていないんだろうなあ。裸の王様だよね。私もそういうところ、あるし。

 いやむしろ、人は悪い見本から学ぶことの方が多いのかもしれない。良い見本というのは「すごい! でも私にはできないなあ」という反応を引き出しやすいから。それに対して悪い見本ならば「私はあそこまでひどくならないようにしよっと」という感じで、学ぶだけでなく、ちょっとした幸福感もついでに味わうことができるのだ。

 高橋伸夫の『できる社員は「やり過ごす」』(ネスコ、1996)という面白くかつ科学的な本がある。会社員の一番大きな悩みは無能な上司を持ったときだが、そうした場合でも有能な社員は、やり過ごしたり、尻拭いをしたり、泥かぶりをしながらも会社に勤め続けていく場合がある。会社に不満がある場合でも「見通し」があれば辞めないというのがこの本の明らかにするところだ。このことを「未来傾斜原理」と名付けた。現状よりも未来に比重を置くということだ。

 会社に限らず、大学であっても、そこに見通しを見いだすことができなければ、辞めていく人が増えるだろう。それは有能さで上位クラスの人も下位クラスの人も同じなのではないだろうか。(それに、自分の能力や貢献度を評定させたとしたら、全員が「自分は平均以上」をつけるのではないか)

 こんなことを考えていたら、今の学生に足りないものがあるとしたら、ひょっとしたらそれは「見通し」なのではないかと思い当たった。