KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

いいだしっぺの法則

 会議をやっていて、「それは、こんなふうにしたらいいんじゃないですか」というような提案をすると、「それはいい案だ。ぜひあなたがやってください」と切り返されることが多い。これを「いいだしっぺの法則」と名付ける。つまり、何か提案をすると、その実行役が回ってきてしまうということだ。提案をしたくらいなのだから、その人こそがその提案を実行したいのに違いないと考えるからだろう。しかし、本来は、ある提案をすることと、その提案を実行したいということはまったく別物だ。

 それにもかかわらず、いいだしっぺの法則は日本社会ではよく成立する。そして、このことが会議での提案を鈍らせている大きな原因であると考えられる。会議で、ある問題を解決するための方法を話し合うことがある。誰もがその解決法に気がついている。それほど難しい問題じゃない。しかし、その解決法を提案する人はいない。なぜならば、提案したが最後、いいだしっぺの法則によって、「では、○○さん、あなたがやっていただけませんでしょうか」と言われることに決まっているからだ。そうなることが嫌で、みんな黙っているのだ。

 自分に仕事が回ってくることが嫌で、解決策がわかっていながら、黙っている。これは大学のような硬直化した組織では、当たり前に見られる現象だ。腐るほどたくさんの会議が開かれているにもかかわらず、なんら斬新なアイデアが出されず、実行もされないというのは異様な光景だ。要するに、みんな面倒な仕事が回ってくることを恐れているわけだ。自分こそは「いいだしっぺ」にならないように、細心の注意を払って目立たないようにする。

 これをうち破るにはどうしたらいいのか。ひとつは、問題解決を提案する部門とそれを実行する部門とを分離するということだろう。実行部門は、提案部門が作ってきたプランについて検討し、「これではとても実行に移せない」というような差し戻しをする権利がある。それによって両部門において緊張感のあるネゴシエーションが行われることになる。これはひとつのシステムといえる。

 もし提案部門と実行部門が一緒の会議をしてしまうと、そこではお互いがお互いの力をうち消し合ってしまって、何の意志決定もできなくなる。つまりいいだしっぺの法則が効いてしまう。いいだしっぺの法則を排除するためには、部門を分割して、両者が一見反発し合って、しかし全体としては協力して働くようにすればいい。