- 作者: 山崎将志
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2001/01
- メディア: 単行本
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- 作者: 坂手康志
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2000/11
- メディア: 単行本
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岩手県立大学の鈴木克明さんとの打ち合わせで、盛岡に来ている。マイナス10度の世界。
新幹線の中で、2冊の本を読んだ。山崎将志『eラーニング』(ダイヤモンド社、2001、1800円)と、坂手康志『Eラーニング』(東洋経済新報社、2000、1600円)。
どちらもWBT(Web-based training, ウェブベースによる教育・訓練)を紹介した本。
坂手の本は、自分でIQ3というWBTのベンチャーを興していることもあり、ビジネス実践に力点がある。
山崎の本は、アクセンチュアで実際に利用されているWBTを紹介している。また、そのウェブコース作成の基礎理論となっていることにも触れていて、記述が理論的だ。
とりわけロジャー・シャンクが提唱している「目標をにらんだシナリオ作り(goal-based scenario, GBS)」によるデザインがWBTの成否を決めるという。WBTを作ろうとすると、一番単純には、すでにある教科書やマニュアルをそのままWebに移植して、簡単な選択肢問題をつけるだけになる。しかし、それでは実践的なスキルは身につかないし、動機づけも十分ではない。そうではなく、学習目標をシナリオの中に埋め込んで、シナリオを全部こなしていくと(そのためには何度も失敗して)、その結果として問題解決能力がついているような、そうしたウェブコースが求められているという。その理論としてシャンクのGBSがある。
学習コースにおけるシナリオや台本の重要性については、私自身もウェブベースの個別化教育(PSI)を大学で実践していて、気がついていた。しかし、シャンクが理論化していることは知らなかった。
思うのだが、近い将来、教育コンテンツのデザイナーやクリエーターが大きな需要として出てくるだろう。大学の教育学部は、教員養成ではなく、こうした人材を育成することにシフトするべきなのではないだろうか。山崎の本が予測するように、インターネットとデジタル化によって、教育コンテンツは一流のものだけが流通するようになり、それ以外は淘汰される。一流の教育コンテンツを作るためには、理論と実践とを積んだ人材が必要だ。
一流のコンテンツとそれ以外の淘汰されるべきものの二分化、という予測は多くの教員にとって厳しいものになるかもしれない。
また、一流のWBTが広く使われるようになると、学校での教育も、WBTを各自こなしたあとに、教室で生のディスカッションをする、というような発展的デザインが使われていくだろう。
映画と同じように、WBTをただ一人だけで制作することはできない。WBTを複数人でデザイン、製作していくようなシステム、環境、インタラクションが必要になってきている。
もうひとつ、新たな知見。学習における「2重フィードバックモデル」。
古典的なフィードバックモデルは、テストをしてできれば次に進む、できなければ元に戻ってやり直す、というものだった。2重フィードバックモデルは、単にできなかったからやりなおし、というのではなく、できなかったら、なぜできなかったのか、やる気か、方法か、教材か、目標が悪いのかそれを追求することだ。つまり、メタ認知。あるいは、リフレクション、内省。こうしたメタ認知をさせることによって、目標を変更したり、やり方を変更したりするような自由度を確保する。その自由度を保証するようなWBTがこれからの主流になるはず。