KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

ガブリエル・ソロモン編『分散認知』

分散認知―心理学的考察と教育実践上の意義 (現代基礎心理学選書)

分散認知―心理学的考察と教育実践上の意義 (現代基礎心理学選書)

われわれは、学校とは生徒が学ぶことを学ぶコミュニティであるべきだと考えている。そこでは教師は、個人的にも他者と協力する場合にも、意図的学習や自発的な学問研究のモデルであるべきである。もし、うまくいけば、そのようなコミュニティの卒業者は、多くの領域でいかに学ぶかを学んだ生涯学習者として準備ができているはずである。

1993年の「Distributed Cognitions」が、現代基礎心理学選書の一冊として翻訳された。

ここでは、個人内の認知的スキルを重視する認知主義と、外界の人工的/自然環境に規定されるとする状況主義を対比させながら、それらの双方が相互的に影響し合って学習が進んでいくというビジョンを各章の筆者が描き出している。ソロモンの言う、技術「の」効果(effect of technology)と、技術「を用いた」効果(effect with technology)の区別は、前者が転移可能な認知的痕跡を重視し、後者が技術と協力することで得られるパフォーマンス全体を重視するという違いにある。そして、この場合もどちらの見方が正しいというわけではなく、両者が相互作用するということで結論が出されている。

ベイトソンは、視覚障害者が杖をトントンとたたきながら歩く状況を例に出して、この問題を象徴化している。その時、自分はどこから始まるのか。自分のメンタルシステムは、杖を持つ手までなのか、杖の途中なのか、杖の先端なのか。