- 作者: チップ・ハース,ダン・ハース,飯岡美紀
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2008/11/13
- メディア: 単行本
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すでに同じ著者による『スイッチ!』という本を紹介した*1が,この本の方が先に出版されている.この本からは,授業設計や教材作成に活かせる「記憶に焼き付くメッセージ手法」のヒントがたくさん得られる.授業は,それに参加している学生に,あるコンセプトを「焼き付ける」ことを目標の1つにしているので,この本で紹介している方法は大いに参考になるだろう.お勧め.
そのメッセージの方法とは,次の6つの原則(SUCCESs)からなる.
- 1) Simple 単純明快
- 2) Unexpected 意外性
- 3) Concrete 具体的
- 4) Credentialed 信頼性
- 5) Emotional 感情に訴える
- 6) Story 物語性
これらの原則の詳細は本を読んでいただくとして,この中にこんなエピソードが書かれている.
教師は常に生徒からこんな言葉をぶつけられる.「こんなこと習って,なんの役に立つの?」それはつまり,「私にどんなメリットがあるの?」ということだ.
これと同じ質問を,3月3日の大阪人間科学大学でのFD研修会*2で受けた.「この科目を学ぶことがなんの役に立つのか?」と学生から質問されたら教員はどう答えるのがよいかという質問だ.私は,その質問に対して「その科目を受け持っている教員は,その科目を勉強することが,どのように学生に関係があり,将来どのように役に立つのかについて,数十分は語れる準備をしておくべきだ」と答えた.
この本は,たとえば次のようなメッセージを提案する.
「一生必要ないさ.これから先,君たちが代数を使うことはないだろう」
そして,こうつけ加える.ウェイトリフティングをするのは,路上で誰かに殴り倒されて,胸にバーベルを乗せられたときに備えるためではない.アメフトで相手のディフェンスを破ったり,重い買い物袋を運んだり,孫を抱き上げても翌日筋肉痛にならないようにするためだ.
君たちが数学の問題を解くのも,論理的な思考力を高めて,よい弁護士や医者や建築家や刑務所長や親になるためだ.数学は頭脳の筋肉トレーニングだ.ほとんどの人にとって,数学は何らかの目的を達成するための手段であって,数学自体が目的ではない.
このメッセージが6つの原則のどれを使っているのかは,本を読んで欲しい.