KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

アドラー心理学特殊講義と演習:共同体感覚とナラティブ(3)

相手を援助してその人が自分の問題を解決するのを手伝おうとすることは,多くの心理療法が実際にやっていることです.しかし,アドラー心理学が多くの心理療法と違う点は,単に問題解決のお手伝いをするのではなく,共同で問題に取り組んで,共同で問題解決をし,その過程でみんなが成長することをめざしているということです.その中で,共同体感覚を育てていくということです.

共同体感覚の反対は,自己執着(self attachment)です.「これは私にとってどういう出来事か」「私の幸せのために私は何ができるか」という視点で考えると,自己執着になります.自己執着に基づいて問題解決をしようとすると,たとえ解決されたとしても嫌な感じが残ることがあります.それは,その人の隠された劣等感が支配欲に変形されて出てくるからです.それを人は敏感に感じ取るのです.

自己執着ではない,共同体感覚の視点は「これはみんなにとってどういう出来事か」「みんなの幸せのために私は何ができるか」ということです.自己執着の視点から共同体感覚の視点に移って,問題解決をしようとすれば,支配ではなく協力という形で実行できるのです.

人が自分の問題だけを解決しようとすると,逆説的なことに,解決は難しくなり,かえって不幸になってしまいます.一見遠回りのようですが,「みんなが幸せになるためには」「みんなが成長するためには」という共同体感覚の視点で解決しようとすれば,実際に解決の方向に向かうでしょう.でもそうするためは,意識的に努力しなければかないません.