KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

リクルーティングビデオの時代と自分に関する情報を制御するスキル

2022年1月28日(金)

ここ数日でYouTubeから「College Tennis Recruiting Video」という動画がおすすめされてきました。たとえばこのようなビデオです。

https://www.youtube.com/watch?v=AF4rLjJdkIg

最初は何のことかわからなかったのですが、関連のビデオを何本か見て、これはテニスをやっている高校生が大学の奨学金を得て入学したいと、自分を売り込むためのビデオなんだとわかりました。さらに検索すると、テニスだけでなく、サッカーやバスケットボールなどいろいろなスポーツで、リクルーティングビデオを作っている人がいることがわかりました。

なるほど。リクルーティングビデオというと、採用する側として大学や会社が自分の組織を紹介するビデオがすぐに思い浮かびます。しかし、採用してほしい側が自分を売り込むためのビデオを作ってもいいわけですね。採用する方も、採用される方も、両者は対等なのだから。そこでは、YouTubeが1つのマーケットとして機能しているわけです。

大学での自己推薦系の入試はすでに定着しています。たいていは、書類審査と面接の2段階で選抜が行われます。そこにこのようなリクルーティングビデオが入り込んでもおかしくないでしょう。

また、企業の採用試験でも書類審査と複数回の面接が定着しており、その負担は企業、志願者ともに重いものになっています。また面接で、自分の話を「盛る」ことも普通のことになっていて、採用側はそれを見抜くのに苦労しています。そこでこのようなリクルーティングビデオを作って提出してもらえば、採用の正確性は増すかもしれません。

そうすると、個人としてできることは、学生時代に自分が打ち込んだ活動や自分が持っている特技やスキルなどの「証拠」となるビデオを撮っておくことです。そしてそれを上手に編集して、自分のリクルーティングビデオを作成する。

以前書いた記事で、ホルムス, ビアリック, ファデル『教育AIが変える21世紀の学び : 指導と学習の新たなかたち』という本を紹介しました。

https://note.com/kogolab/n/nf5a2aaac1829

この中で、大きな社会変化の中でどのコンテンツを学ぶべきものとして追加すべきかという問題が提起されていました。その回答の1つとして「メディア:インターネットメディアを使った、ジャーナリズム、映像化」というのがありました。最初は正直あまりピンときませんでしたけれども、リクルーティングビデオの文脈で考えてみると、これは学ぶべきスキルの中心とするべきだと理解できるのです。

自分と自分の活動に関する情報を、蓄積し、編集し、それをコントロールすることはこれからの個人が身につけるべき重要なスキルです。それは(今話題になっている)「教育データ利活用」に先行して、教えられるべきことがらです。それを身につけることによって、他の誰かに支配されない人間として自立していけるのではないかと思います。

(参考)

教育データ利活用ロードマップ 令和4(2022)年1月7日 デジタル庁

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/digital/20220107_news_education_01.pdf