2022年11月28日(月)
橘玲『バカと無知』(新潮新書, 2022)を遠征中に読みました。これは近年の、進化心理学、社会心理学、記憶研究、感情研究で明らかになってきたことをベースに、言いにくい真実をまとめています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4106109689?tag=chiharunosite-22
そのメモ:
・人と集団
- 脳は被害を過大評価し、加害を過小評価する。
- 人は集団から排除されないように相手の考えを察知する(メンタライジング)能力を伸ばしてきた。
- 集団の中で目立ちすぎて反感を買うと排除され、一方目立たないと性愛のパートナーを得られないというジレンマに直面してきた。
- 社会を維持するためには抜け駆けとフリーライダーに対処する必要がある。そのため不正をするものを処罰すると、それが娯楽になる。これをSocial Justice Warriorと呼ぶ。
・知能
- 認知能力の低い子どもは何を知らないかがわからないので、フィードバックを受け取ってもどうしていいのかわからない。
- いじめ問題の本質は、学校という逃げ場のない空間に「監禁」されていること。
- 人口の6人に1人は偏差値40以下。この人たちは知識社会の中で「見えない存在」にされている。
- ヘックマンは就学後の教育が学力をほとんど向上させないという事実を見て、貧困層の幼児に投資を集中すべきだと主張した。
・自尊心
- 自尊心は原因ではなく結果。テストで良い点を取れば自尊心は高まる。ほめて伸ばそうとすると、報酬(ほめことば)を先に受け取ることになるので努力しなくなる。
- 自尊心の高い人は自分の能力を活かすことで、低い人は対人関係のスキルを磨くことで危機を乗り越えようとする。
- 強者からのアドバイスなら自尊心が傷つくことはないが、同等の人からは「マウント」されていると感じる。
- ボランティアは自尊心を低い人にとってそれを引き上げるための簡便な方法。
・共同体
- 内集団が成立するためには外集団が存在しなければならない。共同体の安心感や温かさはメンバー外を排除することから生ずる。
・記憶、トラウマ
- 催眠療法は記憶を「捏造」している。記憶は常に流動しており、書き換え可能だから。
- トラウマ的体験をした人がPTSDになるのではなく、もともとトラウマ体験を持ちやすい人がPTSDになりやすい。神経症傾向の低いポジティブな人はトラウマ後成長になる。
- 現在の精神的不調(生きづらさ)がトラウマを作り出している。
・知能
- 進化心理学では知能の目的は自己正当化。
- 我々は無意識に自分の主張=物語を一貫させようとしている。