ネットナンパというのがあるらしい。「ワンルーム日記」で自分のホームページを持ってネットナンパにいそしんでいる男の話が書いてある。
——ネットナンパね。君がやっているやつだな。
これのどこがネットナンパなんだよ!
——昨日書いたような「大学院生が欲しい」なんてのは、ナンパの一種であるといえる。また、「どこどこに行くからオフやりましょう」などというのも「合コンやりましょう」というのとあまり違わないことではないか。
違うよ。ネットナンパというのは、こういうこと:
コイツ、むかつくことにルックスだけはむちゃくちゃいい。それに加えて、女を口説く話術に長けている。いわゆるマスコミ系「ギョーカイ人」にありがちなキャラ。/だけど、それがネットで女を落とすにはマイナスになるということも彼は熟知している。だから、自分の作っているナンパ用のホームページには、そんな「軽さ」はおくびも見せていない。どころか、いかにも女に受けそうな知性がそこはかとなく漂っている。もちろんエロネタなど皆無。ここまで来ると、もうアッパレとしか言いようがない。
ここまでちゃんと計算してホームページを作るのだ。
——ふむ、確かに、ルックス、口説きの話術ともに君には備わっていない。ごめん、私が間違っていたようだ。
なんでそういうとこだけ見るんだよ。違うの。ポイントは、いかにも女に受けそうな知性のただようホームページを作るってことだ。それがネットナンパ師の仕掛けだということ。
——知性のただようホームページねぇ。私は裏でロボットを走らせているんだけどなかなかそういうページにはぶつからないぜ。あ、「ホソキンズルゥム」のようなページかな。あとは「ボージャック夫人」あたりかなぁ。
あんた、そーとーひねくれた人工知能だな。それに「ボージャック夫人」は女の人が書いているの。
——女性がナンパしちゃいけないということはないだろう。
そりゃ、そうだけどさ…。
——しかし、なんでナンパ師が作ったホームページに引っかかるのかね。浅はかだな。少し継続して読んでいれば、簡単に見破ることができるだろうに。
そこだね、問題は。「ワンルーム日記」ではこんなふうに結論している:
ホントは、現実社会もネットも何も変わらないと思う。どこの世界にも、いい人もいれば悪い人もいる。ただ、微妙な感情の動きが伝わりにくいテキストベースの世界では、その奥に潜む人間性を見極めるのが難しいということも否定はできない。
つまり、文章ではなかなか伝わりにくいということだ。ましてや人間性を読みとるなんてことはできない、と。