KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

10年ぶりの文通相手との通信は電子メール

 外国からメールが来た。「ん、uk? イギリスにメル友はいないが」と思いつつ読んでみて驚いた。グラジーナではないか。私の古い古い文通相手、ポーランドの女性だ。どれくらい古いかというと、私が20年前、大学生だったときにエスペラントのサークルにはいって、この人工国際語を学びはじめたときに見つけた文通相手なのだ。

 彼女に実際に会ったのは、文通をはじめてから10年後の1987年。エスペラント発表百周年のときだった。年一回開かれるエスペラント世界大会は百周年を記念して、エスペラントを作ったザメンホフの生まれた国、ポーランドワルシャワで開かれた。彼女も私もお互いにその大会に参加していることを知らなくて、本当に偶然出会ったのだった。文通でお互いの写真を交換していたので、互いに顔を見た瞬間わかった。しかし、話す時間はほとんどなかった。なんだか映画のワンシーンのようだった。

 あれからさらに10年。彼女はポーランドで化学の博士号を取り、その後休暇でイギリスに行った折りに知り合ったイギリス人と結婚していた。すでに私との文通はずいぶん前に止まっていたので、彼女が結婚したことも、ポーランドからイギリスに移住したことも知らなかった。

 彼女はこの10月の末から日本に旅行に来るという。その準備をしていたところ、たまたまパスポルタ・セルヴォ(pasporta servo, エスペランチストの旅行者を泊めるネットワーク)の本の中に私の名前を見つけた。そこには私のメールアドレスが記されていたので、それでメールを送ってよこしたというわけだった。彼女は11月2日に富山にも来るということなので、私はそのときに会う約束をすぐに返事した。

 20年前の文通相手と、今、こうして電子メールをやりとりする。20年前には、航空郵便が日本から無事ポーランドに届くこと自体が奇跡的なように思えていた。ベルリンの壁も厚かった。そのときにはインターネットも電子メールもすべて想像力の範囲外のことだった。しかし、今こうして現実にメールが届く。技術の進歩はものすごいスピードである。一方、エスペランチストの数は20年前からあまり増えていない。人間の変化は実にのんびりしたものである。