KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

日本心理学会大会3日目@学芸大学

 日本心理学会の大会の3日目、最終日である。午前中は途中からだったがシンポジウム「教育実践のアプローチを探る」に出た。上智大の中野良顕さんの行動分析学による直接教授モデルの学校での実践報告を聞く。直接教授モデルとは、指導案の設計、教材準備、授業中の行動チェックを中心とするものである。これを見て教育工学そのままではないかと思われるかもしれない。そのとおり、教育工学のご先祖さまは行動主義心理学行動分析学、スキナー)であるから。しかし、個別教授のことは特に言及されなかったのでそのことを質問すると、アメリカの実践を見た限りでは集団でやっているとのこと。

 また、行動分析学会の会員は心理学会の数パーセントでしかない。教育心理学会とはかなり重複している。しかし、私の知る限り、教育工学会と行動分析学会の両方にはいっている人は皆無であると思う。この点でなんらかの交流があれば、お互いの学問領域にとって有効ではないだろうか。特に行動分析を教育実践に生かしている人たちは、教育工学にとっても有用だ。まあ私が行動分析学会に入ればいいのかもしれないが。

 このシンポジウムは先を聞きたかったのだが、残念ながら退出。「構造方程式モデル」の講習会に出るためだ。これは一時間ほどのレクチャー(豊田秀樹さん)につづいてウインドウズマシンを使ってのEQSプログラムの実習と、非常に良く設計されたものだった。講習会の設計として見習うべし。しかも無料。定員制だったが多くの定員外の人が出たこともうなずける。この講習会に出ただけでも一万何千円かの価値があった。豊田さんには直接ARCSモデルに適用するときの注意を質問し、ヒントをもらった。

 午後は「ヒューマン・コンピュータ・インタラクションと心理学」のシンポジウムに出る。パネリストはそうそうたるメンバーだけれど、問題設定がいまいちでもったいなかったような。心理学が社会の要請にどう応えるかという問題だか、この手の問題は決定的な解決策があると言うよりは、なるようにしかならないという点があるものだ。まあ、しかし私は三宅なほみさんにリサーチクエスチョンとしてどのようなものがいいといえるのかということについて質問をした。

 続いて最後のプログラム。大会の開催方法についてのシンポジウム。聴衆は十数名しかいなかったが、こんな変なシンポジウムに来る人は、みなひとくせある人たちで、パネリストの話よりも、聴衆の質問の方が鋭いのではないかという私の予測は的中した。パネリストの話が一通り終わると、それよりも過激な意見がフロアからは次々と出てきた。予稿集廃止、査読導入、インターネット利用など、どの程度導入されるのか。来年の心理学会は中京大学だ。

 こんな具合に、大会は終わった。私にとっては久しぶりの参加だったが、講習会の充実や多数の自主シンポジウムの開催など確実に大会のやり方は変化している。良くなっていると思った。