- 作者: 坂元章,坂元桂,森津太子,高比良美詠子
- 出版社/メーカー: 学文社
- 発売日: 1999/11
- メディア: 単行本
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11/23の日記で、サブリミナル効果やウィルソン・ブライアン・キイの話を書いたのだが、その日に自宅に帰ってみると、この本が届いていた。あまりにもタイミングが良すぎるので、ドキリとしてしまったが、早速読ませてもらった。
この本は、サブリミナル効果を学術的な視点からまとめたもので、もちろんひとつひとつの研究を正確に紹介しているのだが、とりわけサブリミナル効果研究の歴史と社会との関わりを常に意識しているところに興味を引かれた。
1950 年代の「コカコーラ実験」によって、サブリミナル広告やサブリミナル効果は社会的な問題にまで発展した。映画の中に、観客に気づかれないような短時間のメッセージ「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」のコマをいれておいたら、コーラやポップコーンの売り上げが上がったというコカコーラ実験は有名だ。しかし、これをおこなったビカリー自身が、このデータは特許出願のため収集したものであり、信頼できないものであるということを告白していたことはあまり知られていない。いずれにせよ、この実験をきっかけにたくさんのサブリミナル効果に関連する研究が行われてきた。
テレビ放送ではサブリミナル広告は(その効果の有無に関わらず)フェアではないとして禁止されている。しかし、禁止されているという事実が、逆に、人々をして「サブリミナル広告には効果がある」ということを信じさせているという見方もできるという。
この本は、サブリミナル効果は存在する場合がある、と結論する。少なくともサブリミナル効果がまったく存在しないということはできない。しかし、どのような条件の時にどのような効果を及ぼすのかということは十分に解明されていない。
サブリミナルというと広告や心理操作のような暗い部分の応用がすぐに思い浮かぶけれども、もっと役に立つ応用も考えられる。たとえば終章で紹介されている「サブリミナル・ヘルプ」は面白い。エディタを使わせている間にヘルプ画面を断続的にサブリミナル呈示をすると、文書作成中にヘルプ画面を開く回数が有意に少なくなるというのだ。ただ回数が少なくなるというだけで、それ以外ははっきりした違いはない、というのだが、面白いと思うと同時に本当かなという疑問もわいてくる。まさにこの点が、サブリミナル実験が多くの科学者を巻き込んできた理由だろう。
サブリミナル効果については、下條信輔さんの「サブリミナル・マインド」(中公新書、1996)もお勧め。こちらはサブリミナル効果だけではなく、脳科学、人工知能、知覚心理学の知見を縦横無尽に引用して、「私の行動は私が決めている」という当然だと思っている考えをひっくり返して、私たちの脳味噌を揺さぶってくれる。
- 作者: 下條信輔
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1996/10
- メディア: 新書
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