KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

私の町

 私の町の1番目は、生まれて育った町。東京の下町、江東区大島。生まれてから32年間を過ごした。2番目は、今住んでいる町、富山県八尾町。東京から移り住んでまもなく10年になる。3番目がタイ王国東北の田舎町、ウドーンターニー。ここには1992年10月から丸一年間暮らした。JICAのプロジェクトで、現地の先生たちと一緒に仕事をしていた。気候も食べ物も言葉も違うところに住みつくというのは大変なことだ。それでも一年間暮らすと、「私の町」と呼びたくなるような気持ちになる。現に今でも、あのただ暑くてほこりっぽい町並みを懐かしく思い出すことがしばしばある。気がゆるんだときにフラッシュバックするウドーンの人たちの顔。

 ウドーンはタイの東北部にあり、メコン川を渡ればすぐラオスというところに位置する。土を掘れば塩がでてくるため、作物は満足にできない。タイ全体から見れば貧しい地方だ。しかし、ここに住む人たちの人柄は暖かく、優しい。町を離れれば、本当に何もないところだが、それがかえって心を和ませる。ひょっとしたら私の先祖はここから来たのではないだろうかというような突飛な錯覚を催させる。

 ウドーンを離れてから6年。今はどんなふうに変わっているだろうか。帰国直前にウドーンに初めてのコンビニ「セブンイレブン」ができた。私たちはセブンイレブンに喜んで通っては、かき氷を買っていた。それは文明の味だった。でも懐かしく思い出すのは、小さなコッペパンに切れ目をいれて、そこに手作りのアイスクリームを挟んだものだ。町を流してそれを売っていた。そのアイスクリームは文明とは隔絶したような、妙に懐かしい味で好きだった。ときたま腹を下すのがギャンブルではあったけれども。

 今はまだ子供が小さいので海外旅行はできないのだが、それができるようになったら、必ずタイに行こうねと妻と話している。