KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

松尾太加志・中村知靖『誰も教えてくれなかった因子分析』

誰も教えてくれなかった因子分析―数式が絶対に出てこない因子分析入門

誰も教えてくれなかった因子分析―数式が絶対に出てこない因子分析入門

そうするとやはりあれかなあ。「サルでもわかる因子分析」とでも銘打って、Web教材を作るしかないかなあ、という気分になってくる。全国の大学の卒論生で因子分析を使う学生はたくさんいるだろうから、役に立つかなあ、なんて考える。

なんてことを、1999年12月3日の日記で書いていた。でもこれはやらなくてよくなった。

松尾太加志・中村知靖『誰も教えてくれなかった因子分析』(北大路書房、2002、2500円+)という本が出たからだ。

この本は、本当にていねいに因子分析を説明してくれる。活字のポイントを小さくしても文章を詰め込み、文章を読んでもらうことでわかってもらおうという姿勢がすばらしい。図表も「ここに注目」というポイントが明らかで、重要なものは躊躇なく何度も提示するという親切さ。

それもそのはず、松尾さんのあとがきによれば、この本はテクニカル・コミュニケーションについての自分の研究の「実践成果」として位置づけたいとしている。テクニカル・コミュニケーションの研究者たるもの、こうあるべきだという手本ではないか。テクニカル・コミュニケーションの研究者がわかりにくいマニュアルを書いていたのでは、説得力がない。テクニカル・コミュニケーションの学問的知見を生かせば、こういう本ができるのだ、という提示の仕方は一番説得力があるものだ。すばらしい。

この本はテクニカル・コミュニケーションの研究者と統計学の専門家のお二人の共同作業である。こうしたコラボレーションのあり方もこれからの本の作り方について、とても示唆的だ。