KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

ストーリーの連立方程式メタファ(教育心理学会@大阪国際会議場)

8月22日から大阪国際会議場での教育心理学会の大会に参加していた。大阪は暑くて、冷夏の関東から来た身としては、うれしいような。

初日の午前中で、ポスター発表を終えたあとは、自主シンポに出たり、ポスターを見たりしていた。その中でも、アクションリサーチのシンポは勉強になった。そのメモ。

アクションリサーチの源流は、クルト・レヴィン。ヴィゴツキーの「主体・媒介ツール・対象」の三角形モデルを拡張したのが、第2世代のレオンチェフ。それに付加して「ルール・コミュニティ・分業」のモデルを作ったのが第3世代のエンゲストロム。

活動理論から見るアクションリサーチは、「フィールドワーク→分析→モデル創出→モデル実践→定着・・・」という具合に展開していく。それは研究者と実践者の協同であり、共通言語の創出である。「研究なくして実行なし、実行なくして研究なし」。理論とデータは互いに補いあう。

エンゲストロムのKnotworking。手工業→大量生産→プロセスの向上→大量カスタマイズをへて、共同形態(co-configration)へ。

民主的学校の実現。オールポートの言う「民主的集団」。哲学的代弁者が、デューイ。心理学的代弁者が、クルト・レヴィン。

問いの次元に3つあり。

1. 技術的:仮説検証
2. 解釈的:行為の意味
3. 批判的:なぜこのことをしているのか?

これは私から見れば、行動主義・認知主義・社会構成主義の展開に対応している。

研究者は「理論的言説」を吐く。現場の人と共同で「物語」を紡ぎ出す。

この変化は、大きくまとめれば、

  • メタ理論:論理実証主義→社会構成主義
  • 理論  :仮説の整合性→生成力へ
  • 方法  :実験室実験 →参与観察へ
  • 実践  :予測と制御 →言説の交換へ
  • 成果  :研究論文  →エスノグラフィー

インタビューや感想文には必ず「ドミナント・ストーリー」が出てくる。これを越える物語を得ることがアクションリサーチのポイント。そのためには、「飲みに行く」(笑)、「問いを発しない」、「語るがままに聞く」ことが大切。

ストーリーの連立方程式メタファ:

ストーリーは一本の式。式の中の、x,y,zが体験。x,y,zを解くためには、その変数の数以上の式(ストーリー)が必要だ。だから、たくさんのストーリーを集める必要があり、そのことそのものがアクションリサーチの中核部分になるのだ。

コメント:これは教材作成にも応用可。そこでは、変数はターゲット概念やスキル。ターゲット概念を獲得させるためには、それ以上の個数のストーリーを学習者に提示することが必要。つまり、文脈と問題状況を多重に変化させることが必要なのだと言うこと。