教育心理学会の話の続き。
今回は、BBSに意見を書く事前のプロセスとして、3人組のインタビュー(話し手、聞き手、メモ係)が有効だということを「トライアド・インタビュー」という新語を造ってアピールした。
意外だったのは、発表のポスターを見るなり「難しいことをやっているんですね」という反応が多かったこと。内容は非常に簡明で、しかも非常に実用的なことを扱っているのにね。「トライアド・インタビュー」という新語がそういう印象をもたらすのか。
私自身が、心理学というよりも教育工学の方に軸足を移しているということを感じるのは、こんなときである。トライアド・インタビューの開発にはこんな背景がある。
- 授業で小グループ討議をすることは効果的だ
- でも、しゃべる人と聞いている人だけに二分化する
- 討議したという体験は充実感をもたらすが、内容は浅いことも多い
- BBSを使っても、書く人と書かない人に二分化する
- ならば、トライアド・インタビューで、書くための準備をしてもらおう
- それで、そのあとにBBS討論をしてもらおう
明らかに小グループ討議を充実させるために、トライアド・インタビューという手法を考えたので、それが効果的であることは、ほとんど自明なのだ(そうでなければ、デザインが失敗しているということ)。そこに、インタビューをしない統制群を設けて実験するなどということは、頭に登ってこない。まあ、逆に言えば、そうした命題(仮説)を、たとえば卒業研究で実証してもらうという形態は考えられるね。そこでは、逆に効果がなかったら大発見につながるかも、というスタンスになる。
「大学生の読書」というテーマをひとつ取り上げてみると、教育心理学ではサーベイになるのがふつう。教育工学では、たとえば「テレビを一ヶ月間消してみる」ことが「大学生の読書」をどのように変化させるか・させないかというような介入研究になる。読書時間を増やすにはどうしたらよいかというアイデアから出発するからだ。
さらに例を挙げれば、心理学者は「どのような図が効果的なのか」とか「どうしてこのような図が効果的なのか?」ということを考える。教育工学者は、「効果的な図であることを目指して、このような図を考えた」とか「どのようなケースや状況においてその図は効果的であったか?」ということを考えるのだ。
説明指向か開発指向かというベクトルの違いは大きい。しかし、両者が補いあって進展していくことは確かだ。