KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

事例研究の伝統

きのう書いた「ケースメソッド」だが、冷静に考えてみると臨床心理学ではごく普通の方法なんだよね。事例研究というやつだ。ただ方法はどうあれ、それが、法則定立指向なのか、個性記述指向なのかという違いは大きい。法則定立指向では、平均値や平均的プロセスを記述しようとし、個性記述指向では分散や外れ値やそれが起こるプロセスを記述しようとする。

もちろんこの2つの方向性は相互補完的だ。平均を記述しなければ、外れ値かどうかの判定がつかないから。研究論文で事例研究を取り上げる場合は、一般化可能性ということが問題になるけれども、事例の集積がなければ、その判定は難しいものになるだろう。だから、事例研究の伝統がない学問領域では、なかなかそれが広まっていかないのかもしれない。