KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

雑誌「毎日が発見」でインタビュー記事

2ページの原稿になった。

(タイトル)

長続きする日記のコツ教えます



早稲田大学助教授 向後千春さん

(リード)

日記を書き始めてはみたものの

なかなか続かなくて……という人は多いことでしょう。

でもコツさえつかめば、

面白いようにスラスラ書けるのです。

取材・文/田中延幸



(プロフィール)

こうご・ちはる

1958年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。現在は同大学人間科学部助教授。専門は教育工学・教育心理学。日記の書きかたなど「書く技術」に関する著作多数。



(本文)

「毎年、この時期になると書店に立派な日記帳が並びますが、日記が長続きしないという人にはあまり向いていません。日記帳が立派だと、緊張して本音が書けなくなるからです」と言うのは、早稲田大学助教授の向後千春さん。自身も七年前からインターネット(はてなダイアリー)で毎日更新の日記を公開しています。では、どんな日記帳がいいのでしょうか。

「気軽に日記を始めるなら、大学ノートを使ってみましょう。どこにも持ち運べますし、書かない日が空白になることがなく、文章の長さも自由自在です」



ネタさえ見つかれば

面白いように書ける



 張り切って日記を始めたのに、やがて数日おきになり、そのうちすっかり忘れる人もいます。

「日記が続かない人は『書くことがないから』と言いますが、旅行など特別なできごとだけを書くのが日記ではありません。散歩の途中にサザンカの花を見つけて季節の移ろいを感じたり、電話で旧友と話したりも、日記の立派な題材です。テレビ番組、読んだ本、今日の食事、自分の体調など、身の回りを探せばネタはいくらでもあります。

 何かのきっかけで昔のことを思い出すこともあるでしょう。キンモクセイの香りから子どもの頃に遊んだ公園を思い出したり、近所の親子連れを見て自分の娘が小さかった頃に遊んだ話を日記に書くのもいい。逆に言えば、日記のネタを探すつもりで、身の回りを眺めたり、記憶の糸をたどることで、新しい発見ができるのです」



読む人を意識して

悪口や不満は避ける



日記は自分だけの秘密なので誰にも見せない――そういう人が多いようですが、むしろ読み人を意識して書いたほうが、長続きするし、プラス思考になると向後さんは提案します。

「日記は自分以外読まないので、人に言えないグチや不満、誰かの悪口などを書き連ねる人がいますが、それでは恨みつらみを増幅するし、後で読み返したときに、つらくなります。それを避けるには、自分の日記を家族などが読むことを前提に書くといいです。嫌なことがあっても、その経過を淡々と書くだけにとどめて、嫌な気持ちを書くのはおさえる。それを読み返せば、そのときの感情を思い出しますが、自分も大人げなかったと振り返ることができる。それも日記の効用です。

 日記を食卓になど置いて家族に読んでもらってもいいし、心構えだけでも読む人を意識すると投げ出すわけにいかなくなります。文章がていねいになり、自然に面白いことや楽しいことを書くようになり、毎日の生活もプラス思考になります。人には見せない日記と家族が読んでもいい日記を使い分けるのも手です」



三日、三週間、三カ月がヤマ

三年続けばずっと続く



 日記を書くコツを覚えたら、あとは歯磨きのように毎日の習慣にすること。三年続けばずっと続くと向後さんは言います。

「若い頃と違い、中高年になって日記をつけるのは、自分の人生を残しておきたいという隠れた欲求があります。自分が亡くなったあと、配偶者や子どもが目を通してくれれば、何を考えながら生きてきたか読み取ってくれる。何十年か先、子や孫が今の自分と同じ年齢に近づいたときに読めば、人生の参考になるかもしれません。最近は『自分史』の出版ブームですが、毎日書く日記は温もりがあります。

 そのためにも、毎日続けることが大切。書き始めて三日、三週間、三カ月がヤマで、それを超えて三年続けばずっと続くはずです。日記を読み返せば、自分を客観的に見ることができます。ものの見方や考え方の変化を楽しんだり、人間的な成熟を確かめることもできるでしょう。

 何歳になっても、日記を始めるのに遅いことはありません。が、思い立ったら吉日。さっそく今日から書き始めてみてください」



長続きする日記三カ条

体験だけでなく、思い出も日記のネタになる

気持ちを書かず、事実だけを淡々と

一行だけでもいいから、三カ月書いてみる