- 作者: 頼藤和寛,中尾和久,中川晶
- 出版社/メーカー: 朱鷺書房
- 発売日: 1993/05
- メディア: 単行本
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amazonでは、出版社からは品切れになっているが、マーケットプレイスには潤沢にあるようだ。超お勧めの本。
心理療法の効果研究については、ミラー・ダンカン・ハブル『心理療法・その基礎なるもの』(http://d.hatena.ne.jp/kogo/20050219/p1)が包括的だが、この本でも取り上げられている。
それよりも、圧巻なのは、代表的な心理療法の流派を概説した3章「さまざまな意匠」(頼藤担当)。
これも割に合わない作業である。なぜかというと、おそらくどの流派の専門家をも不愉快にさせるだろうからである。この点でも宗教と同じで、とにかく自派を持ち上げる場合や、他の派の問題点を指摘する場合は許したり賛同したりするのだが、この逆、つまり自分たちが帰依している流派に関して手加減を加えない記述に対しては黙殺ないしは批判が必至なのである。だから、この業界では、特定の流派に属する専門家がせっせと自画自賛しながら、他の流派についてはコメントを控えるという紳士協定が暗黙のうちに守られている。互いに本当のところをぶつけあいだせば、すぐに泥仕合になって共倒れになりかねないことを誰もが知っているらしい。
といって、催眠、精神分析、来談者中心カウンセリング、行動療法、認知療法、家族療法、内観・森田・トランスパーソナルをコンパクトに、しかし説得的に一望する。この一章だけでも本を手に入れる価値がある。