KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

出席票を配るくらいなら、大福帳を使おう

  • 出席票を配るくらいなら、大福帳を使おう

教員にとって、受講生の出欠は重要な関心事項である。授業の出席を取らない場合は、急速に出席者が減る。受講生の何割かはそもそもその授業に関心がないこと(単位の蓄積のみに関心がある)、そして、ある確率で教員が自分の授業を魅力的なものにすることに失敗すること(あるいはそもそも努力しないこと)があることを考えれば、受講生が出席しようがしまいが記録されないということで、出席者が減少するのは自然な成り行きである。

したがって出席を取るわけだが、代理で返事をしたり、代わりに出席票を書いたりするという不正が起こることになる。もし、大福帳を使えば、代理で記入することは不可能になる。二人分の大福帳を記入することは、やっかいなことであるし、すぐに見破られてしまう。

大福帳は不正がしにくいという以上の利点を持っている。それは、これまでの出席状況が一目でわかるということである。何回休んだのか、いつ休んだのかが一目でわかる。皆勤賞を目指そうとする受講生も出てくる。それも大福帳の一覧性によるところが大である。

  • 「まじめに授業を聞こう」ではなく、大福帳を書かせよう

アンケートの結果から、大福帳を書くことによって受講生自らが変わった点として、授業の振り返りをし、授業内容について考えるようになったことを挙げている。教員としては、自分の授業をきちんと聞いて欲しいのは自然な欲求である。そのために小テストをしたり、クイズをはさんだり、さまざまな工夫をする。しかし、授業の最後に少しの時間を取って大福帳に高々150字程度の文章を書いてもらうことを習慣づけることによって、受講生は授業の内容について集中するようになることが示唆されている。

とすれば、「まじめに授業を聞こう」というスローガンを掲げるのではなく、大福帳を書かせればいいのである。テストをするのが好きな教員であれば、問題を出して、その解答を大福帳に書かせればよい。そうでない教員は、ミニッツペーパーのように、今日の講義で重要な点をひとつ、そして質問をひとつ書かせればよい。それも好みでない教員であれば、自由な感想を書かせればよい。いずれにしても大福帳に書く仕事が待っていることを承知している受講生は、授業内容をよく聞き、書くためのネタを記憶にとどめておくようにするだろう。それがとりもなおさず、授業に集中するという成果を生む。

  • 大福帳が教員の姿勢について暗示するもの

大福帳というコミュニケーションツールを教員が使うということ自体が、受講生に対してある種の暗示を行っている。それは、教員はこの授業を通じて、受講生とコミュニケーションを取りたいと思っているという暗示だ。たとえ、受講生の書き込みに対してコメントをしないでいても、それを読んでいるということを示すことで、教員はいつでも受講生の意見に耳を傾けているという姿勢を示すことができる。

もうひとつは、受講生に対して、この授業に参加して欲しいという暗示だ。大福帳を見れば受講生の出欠状況が一目でわかってしまう。それを教員が常にモニターしているということは、授業をおざなりのものではなく、常に多くの受講生が参加して欲しいものと考えているということを暗示していることになる。

eラーニングにおいても、大福帳を試してみる価値があるだろう。毎回の授業で、自分にとっての重要なポイント、質問、授業に対する要望(もっとゆっくり、もっとやさしく、もっと具体的に……)などを書いてもらうのである。そうすることで、上に挙げたような大福帳の効果と暗示がオンライン上でも発揮されることが期待できることだろう。