2024年8月21日(水)
北大の集中講義のとき、受講生のひとり、煮雪(にゆき)さんから尋ねられた。「今回の心理学史のようなことを学ぶにはどうしたらいいですか」と。レクチャーの一部で心理学史をざっくりと話したのだが、それを気に入ってくれたようだ。
そう、誰々という心理学者はこんなことを発見したというようなことは個別に学ぶことはできる。たとえば『心理学用語の基礎知識』というような本を読めばいい。実際、私はこの本を読んで大学院入試の準備とした。しかし、学問のエッセンスは誰と誰がつながっている(影響を与えている)か、何と何の概念の関係はどうなのかということにある(コネクション)。
こういうつながりを話せる人というのはそう多くない。専門が分化しているからだ。全体を見渡すのは大変な仕事になる。それをやっていると時間の割に研究が進まない。手っ取り早く研究成果を上げるには、狭いところを深く掘るのが一番だ。というわけで全体像を話せる人が少なくなる。
考えてみると、私は心理学史的な視点を野田先生から学んだのだった。野田先生は博覧強記の人で、聞けばなんでも答えてくれる人だった。私は彼から心理学史のコネクションのアイデアを学んだのだろうと思う。良い先生に出会うことは大切だな。しかし、それは偶然だけとも言えない。自分の準備ができていて、初めて偶然を活かすことができる。クランボルツの「計画された偶発性」ということですね。