KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

日本心理学会第60回大会

先週は日本心理学会の大会と、教育工学会の研究会に連続で出たので、ずっと東京にいました。やっと富山に戻ってきたと思ったら、明日から、遅い夏休みで北海道に旅行します。というわけで、大会で面白かったことなど、たくさん書くことがあるのですが、いっぺんには書けそうにないので、少しずつ書いていきますね。

子どもの作文観の調査

小学生が作文に対してどのように考えているかを調査した、清和女子短大の平山さんのポスター発表が面白かった。

自由記述による調査によると、小学生が作文を難しいと思っている原因として、次の三つの点がまず挙げられた。それは「書く内容が見つからない」、「タイトルをつけるのが難しい」、「構成が難しい」ということだ。

これはそのまま大学生でも当てはまるのではないか。まず書こうとする内容を見つけることが大切なのだ。しかし、その一方で、とりあえず、書き始めてみて、書きながら考えをまとめたり、資料を探したりしつつ、書き続ける、という姿のほうがもっともらしいという知見もある。とにかく書き出してみることが大切だということだ。「書く内容が見つからない」、「与えられたテーマが面白くない」というのは、いかにも作文がうまくいかない直接の原因のように思われるが、その一方で、たとえテーマが面白くなくても、また、書く内容が見つからなくても、書き出してしまい、その途中で、深く考えたり、調べたりするような、いわば「書きつつ考える」という習慣をつけることも大切な学習方略のひとつのように思う。

また、平山さんの調査で、作文の得意な子と、そうでない子ではどこに違いがあるのかということも明らかにしている。そのひとつは、漢字がかけることや字のきれいさ、ということに起因し、もうひとつは、書く内容に起因している。興味を引くのは、作文の得意不得意は小学生の段階では、字のきれいさという周辺部分と、作文の内容という中心部分に規定されているということだ。

もしそうであれば、ワープロを作文に導入することは、字のきれいさ、きたなさの差を均一化してしまうわけだから、少なくとも作文の好き嫌いの原因をひとつ減らすことができると考えられる。その代わりに、タイプ速度の速い子と遅い子の差がでてきてしまうことになるが、これは字のきたなさのようには露見しないだろうし、訓練すればどんな子でもある程度のタイプ速度を得られるはずだ。小学生へのワープロの導入は、「情報化に対応する」というような、はっきりしない目標ではなく、「作文を楽しくする」という具体的な目的のために、役立つのではないだろうか。

江川紹子さんを見に行った

私は、またまたミーハーぶりを発揮して、ジャーナリストの江川紹子さんが話すという、マインドコントロールのシンポジウムを見に行った。江川さんは、テレビでいつも見るような淡々とした調子で、オウム信者の悲惨なようすをよどみなく話していった。そして最後に、こんなことを出席者に訴えた。「ここにいる心理学者の皆さんも、マインドコントロールの問題を研究対象としてでなく、真剣に一度考えて欲しい」と。ううむ、かっちょいい。

エセ宗教や、ネズミ講、自己開発セミナー、など、若者や主婦がはまってしまう罠が多い。おとうさんたちがはまらないのは、単に会社が忙しいからという理由だけだ。方法を知っていれば、人を洗脳したりすることは誰にでも可能なのだ。そして、その方法やからくりを知らない人たちが簡単にだまされていく。すくなくとも、大学の教養の心理学の時間に、「簡単にできる神秘体験もどき」や「いやと言えない洗脳的説得法」などの実習をしておけば、こういう罠にはまる人の数はもっともっと少なくなるんだがな。