- 作者: コリンウィルソン,Colin Wilson,由良君美,四方田犬彦
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1998/11
- メディア: 文庫
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コリン・ウィルソンの「至高体験」(河出文庫, 1200円)をやっと読み終えた。マズローを軸に据えた心理学物語。大学院受験のときに興味もないのに詰め込んだ心理学史とはまったく別の面白さ。しかし、読み通すのは苦しかった。まるでそれを見すかすかのようにウィルソンはこんなことを書いている。
一冊の書物---いや他のいかなる活動でもよい---から相応しいお返しを得るためには、その書物に相応しいだけのエネルギーを投入しなければいけない。それを怠れば、書物は思いがけず退屈な結果となる。
この本の結論はこの延長線上にある。つまり、あらゆる活動は、それに相応しいエネルギー、努力、準備を注ぎ込まなければ、お返し、つまりその「意味」を得ることはできない。そうすることによってのみ至福の「至高体験」を得ることができる。人間が努力を注入しなければ、その人がしているすべての活動はその人の「ロボット」に引き継がれてしまう。まるで旅行中の車窓風景がはじめは興味深いものであっても、ほどなくロボットがそれを眺めるだけになるように。自分の活動をロボットに任せることが、怠惰や退屈を生む。意識的な努力を注入すればロボットは自分の活動に協力してくれるのだが。