KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

うなずきマイク

 昨日(1/19)の夜、NHKの「おもしろ学問人生」という番組を見ていたら、「うなずきマイク」が出てきた。1991年の認知科学会の大会(NTT武蔵野研究開発センタ)で私が「あいづち留守番電話」という研究を発表したときに、たくさんの人からコメントをもらったのだが、その中に「こんなことはもうやっているよ。うなずきマイクというのも開発している」という話をしてくれた人がいた。それ以降、私はあいづち留守番電話の研究をそのままにしていたが、うなずきマイクのことも、誰がどんなものとして開発したのかわからないままになっていた。

 それがこの番組で一気に明らかになった。開発したのは岡山県立大学の渡辺富夫という人だ。1983年の開発だという。うなずきマイクとはどんなものかというと、私はマイクがぴこぴこうなずくのかと想像していたのだが、そうではなく、コンピュータの画面に簡単な人の顔が出てきて、それにつながれたマイクで話をすると、話の切れ目で画面のキャラクターがうなずいてくれるのである。よくできている。ここまでできていればあいづち留守番電話も簡単にできるだろう。

 最近の研究では、この原理を応用してうなずいてくれるロボット(ごんすけという名前だったか)を作ったのだそうだ。しかし、ロボットの方はなんか不気味で、私には簡単な画面上のキャラクターの方がよさそうに思えた。うなずきロボットを応用して、介護の支援をできないかと考えているところが、応用を重んじる工学者らしいところだなあと思ったりした。

 他にもこの人がやっている研究が紹介されていたのだが、特に面白かったのは、コンピュータを介した遠隔会話の支援システムだ。すでにあるテレビ会議システムが使いにくいのは、テレビに相手だけしか映らないところにあるとして、このシステムでは、キャラクター化された自分とキャラクター化された相手とがコンピュータ画面に映し出される。キャラクターは身体につけたセンサーによって動きを画面上で再現する。だから自分と相手の姿を見ながら相手と会話をするということになる。

 このシステムのいいところは、相手と会話している空間を共有しているという感覚が生まれて、それが会話をうまく促進しているという点だ。いい発想だなと思う。このことによって相手が遠くにいてもすぐそばで話しているような感覚になる。また、遠隔のために発言や動作にタイムラグがあっても、それは映し出された自分にも反映されるので、あまり不自然ではなくなるということだ。面白い開発研究だなあと感心する。

 この空間共有の感覚は、ネットワーク・コミュニケーションの促進にも応用できるのではないかと、ちょっと考えているところだ。