KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

サブリミナルは生きている

 心理学の入門コースでも取り上げるのだが、サブリミナル効果というものがある。見えるか見えないかぎりぎりのところ(閾)以下で刺激を提示するものだ。本当に効果があるのかどうかについてはまだ決着がついていない。

 9月14日の読売新聞によると、ブッシュ陣営の反ゴア・テレビCMの中でこのサブリミナル刺激が使われていたとのこと。下の図版は新聞からスキャンしたもの(版権問題が心配だが)。上の画面で「ゴア氏の計画は官僚が決める」といったあと、下の画面のように一瞬「RATS」と印象の悪い単語が提示される。RATSは「官僚」と韻を踏むという念の入れよう。なんだか本物の心理学実験のようだ。

 1950年代の「コカコーラ実験」(以前日記に紹介した坂元章サブリミナル効果の科学』など参照)からの歴史を持つサブリミナルだが、いまだ生き続けているんだな。また、そのCMを分析して、サブリミナル刺激を見つけたゴア陣営の方も、根性がはいっている。

 こういうニュースを聞くと、すごく変な感想かもしれないが、アメリカでは「心理学が社会に生きている」という思いがする。言い換えると、「心理学がきちんと社会に直面している」というべきか。変な感想なんだけどね。

 もちろん、サブリミナル刺激をCMに忍び込ませるのはアンフェアーなこととして非難される。ブッシュ陣営もこれは痛手になるだろう。しかし、それにしても、心理学で発見された効果を、決着がついていないにしても、どこかで応用してやろうという探求心というか、強欲というか、そういうのが透けて見えるような気がするのだ。研究で見いだしたことの一部でもいいから、何かに使ってみよう、利用してやろうという気持ち。それがまた研究を進展させる原動力の一部になっているのではないだろうか。