KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

ロースクール構想と臨床心理士

出版社のPR誌はタダで送ってくれたりするので、けっこう読む。PR誌の中では有斐閣が出している「書斎の窓」は当たりの記事が多い。

日本版ロースクールの批判をしている安念潤司という人の記事はおもしろかった。

新聞では「日本版ロースクール」という単語をみることがあったが、実際それがどういうものであるかよくわからなかった。この記事を読むと、要するにロースクールの修了者の大部分に対して法曹資格を与えるということらしい。それに対して安念さんは、それは不公平なので司法試験はロースクール修了者もそうでないものも同一の条件で受験させるべきだと批判している。

心理学の中にも臨床心理士という資格がある。臨床心理士の資格を取るためは特定の大学(指定校)の修士課程を卒業して試験に合格しなければならない。この指定校制度を批判する人は多い。臨床心理士を取るためには、実質的にこの指定校に行かなくてはならないからだ。どんなに優れた研究者に師事しても、どんなに優れた研究をしても、指定校でなければだめなのだ。そんな馬鹿なことがあるだろうか。学問に家元制度は似合わない。ロースクールもこれと似たことをもくろんでいるのだろうか。

結論ははっきりしている。大学が(司法試験向けの)予備校に負けたのは、大学教師の側に問題があったからだ。……学生は予備校の方が自分たちのニーズに合うサービスを供給すると考えたから予備校に通うまでの話だ。大学教師は、自分たちの企業努力で客を奪回せよ。

ロースクール構想とは、つまりこういうことだ。自分たちの力に自信はない、しかし学生に袖にされるのはプライドが許さない、そこで、お上に泣きついて、予備校に通じる道路をバリケードで塞いでくださいとお願いしているのだ。

このように断じる安念さんのことばは潔い。ロースクール構想にしても、臨床心理士指定校にしても、同じように腐っていくのではないか。指定校というシステムそのものが、腐るようにできているのだから。