Designing World-Class E-Learning
- 作者: Roger Schank
- 出版社/メーカー: McGraw-Hill
- 発売日: 2001/11/07
- メディア: ハードカバー
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リーガロイヤルのロビーでこれを読んでいたら、近くにいた外国人が「そのワールドクラスなんとかの本、誰が書いたのか?」というようなことを聞いてきた、その本。
私がレクチャーするときは、聴衆に「レクチャーは無意味だ。言ったことを覚えている人は誰もいない」という。レクチャーの価値---そして学校と伝統的な訓練の価値---は人々を正しい方向にスタートさせるということにある。そしてそれはこの本の価値でもあるのだが。
パワフルなデザインと供給の原則
- 一番印象に残ったことを一番良く記憶する
- ダメな社員は生まれつきではなく、作られる
- まさにその時にトレーニングする(失敗したとき、困ったとき)
- 失敗によってすべてを学ぶ
- あなた自身があなたを一番良く教えられる(世界一のトレイナーよりも)
- それに対応した体験がなければ覚えても無駄だ
- 学習スタイルは変わらない、パーソナリティが違うだけだ
- まずeラーニングに巻き込み、楽しませる
- シミュレーションベースのeラーニングの適用範囲は広い
ダメなeラーニングの例
- テキストを読む、ボタンを押して次に進む
- テキストを読む、多肢選択問題を解く、採点を受ける
- 問題を読む、答える、フィードバックを受ける、次の問題に進む
- たくさんのテキストを読む、最後に質問に答える
- テストを解く、採点を受ける、フィードバックを受ける
eラーニングコースを評価する7つの規準:FREEDOM
- Failure
- 良いコースは学生を驚かせなければならない。知識とは驚きの反対だから。世界を語るのではなく、学生の記憶を変えるような失敗を与える。
- Reasoning
- どうしてだろうと考えさせるような複雑な状況を提示して練習をさせる。
- Emotionality
- ドライな科目(物理学など)を感情的にするのは難しいけれど。
- Exploration
- 好奇心を呼び出し、探索を促進する。
- Doing
- たいていのコースは「やってみること」の準備にすぎなく、しかも実際にやることはない。
- Observation
- 観察はデータから結論を導くための最初のステップ。
- Motivation
- 動機づけは記憶の統合部門だ。
どうして大学に来たのかと学生にたずねると「4年間の休暇」とか「後に良い職を得るために」などという答えが返ってくる。学校は学ぶ場所ではないのだ。大きな変化を生み出すチャンスを提供するeラーニングは、学校をコピーしてはならない。
「記憶の研究者であるあなたがなぜ教育に?」と聞かれて、シャンクは「教育というのは学習者の記憶を変えることだ」と答えている。その通りのことをこの本で主張している。ゴールベースシナリオの考え方もさらに精緻化して取り入れられている。圧巻は、最後の章「あとがき:eラーニングとは学校のコピーではない」で、学校は主に場所の理由で存続するだろうが、eラーニングはそれとは別の理由で将来の教育システムを根本から変えるだろうと予言する。