KogoLab Research & Review

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杉浦義典『アナログ研究の方法』

アナログ研究の方法 (臨床心理学研究法)

アナログ研究の方法 (臨床心理学研究法)

これはすばらしい本だ!! 読み返したい。

  • p.26 アナログ群と臨床群で症状尺度の相互相関(共分散行列)のパターンを比較したところ、両軍でほぼ同様という結果であった。つまり抑うつの差は量的なものであると考えられる。

これがアナログ研究の基本形。アナログ群と臨床群のそれぞれにおいて、変数間相関の違いがあるかどうかを調べる。

  • p.38 一般に、ある現象の分布を見当することは、その背後にあるメカニズムについて手掛かりを与えてくれるものである。たとえば、性別という現象であれば、男と女という2つの値しか取らない。……一方、知能は連続的に分布していることが分かっている。……分布がこのような形状を取るということは、知能が単一の原因で規定されるのではなく、複数の要因が複合して決定される現象であることを示している。
  • p.61 思考サンプリング研究
  • p.186 メカニズムを明らかにする方法のひとつは、多面的なパッケージのどの要素が効いているのかを調べる研究である。このような研究は、dismantlingと呼ばれる。定訳はないが、要素分解的研究としておく。
  • p.193 また、シンプソンら(Simpson et al., 2006)は、さまざまな身体疾患において、プラセボであってもまじめに飲むことで死亡率の低下が見られることを見出した。
  • p.197 ウェイソンの2-4-6課題で最初から自発的に反証を求めた人は少なかったが(23%),そのような人は知能が高く抑うつが低かった。
  • p.205 フォーマンらは、チョコレートを48時間持ち歩かせて、それを食べないでおく節制行動を促進するための介入実験を行った。
  • p.207 大竹らは、大学生119人を対象に、1週間に自分が他人にどれだけ親切にしたかをカウントするだけで、主観的な幸福感が増大することを見出した。
  • p.202 ACT(Acceptance & Commitment Therapy)では、不安場面で不安をなくそうとすることはかえって不適応のもとだと考えている。むしろ、不安を受け入れる(acceptance)とともにその場で価値のあることに集中すること(commitment)が重要だと考える。たとえば、スピーチ場面では緊張をどうにかしようとするのではなく、聴衆の様子をよく見て、どうやったらうまくスピーチができるか、を考えるようにさせる。
  • p.209 マインドフルネス(mindfullness)とは、自分の体験に判断をせずに優しい注意を向けることである。……レーズンエクササイズでは、レーズンを食べてみる。そのとき、手の上にのせたレーズンの重さ、光沢をじっくり観察し、さらに唇に触れる感触、派に感じる抵抗感などをつぶさに眺める。このような無害な刺激から始め、次第に自分のネガティブな思考をも対象化して観察する練習を行う。いやな考えも、自分を苦しめる現実ではなく、手のひらにのせたレーズンの重さ(軽さ?)と同じレベルで刻一刻と流れる体験の流れに過ぎない、と体験できれば,もはやそれは抑うつの原因にはならないだろう。