KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

教育心理学会総会3日目:協同学習についての自主シンポジウム

初等,中等,高等教育を問わず,授業の中で,協同学習の形態は広く使われている.実際,私の授業でも,教室内での対面授業では,そのほとんどをグループワークで行っている.

これだけ協同学習が広く採用されているのは,そのメリットがあるからなのだけれども,その一方で次のような欠点もある.

  • タダ乗り:タダ乗りされたメンバーは不公平感を感じる.
  • 評価懸念:メンバー内のお互いに対する評価が「決めつけ」になりやすい.
  • 同調圧力:メンバーの多くが特定の意見に傾きやすく,少数のオリジナリティの高い意見が捨てられる.
  • 記憶容量:たくさんの多様な意見が出てきたときに,個人の処理能力を超えてしまう.
  • 言語化の壁:話し言葉で表現することを求められることが多く,言語化や表現が苦手なメンバーが活躍できない.
  • 教えられる不幸:教え合いの協同学習では,不十分な理解なままのメンバーから教えられることもある.
  • ターンテイク:メタ認知が不十分なメンバーがいると,1人で発言を独占してしまい,ターンテイクが起こらないこともある.
  • 非効率:課題によっては,明らかに,個別に取り組んだ方が効率的な場合がある.

私個人の結論としては:

とりあえず協同学習やグループワークを行わせて,そこで何がなされているのか,起こっているのかを再発見するのではなく,最初から「こういう共同行為」というものをターゲットにして,それが確率良く起こるような授業デザインが必要なのだろう.「みんなでやればそれが協同学習」というような考えで,実施してしまうと,メリット,デメリットのすべてが,埋め込まれてしまい,実践的にも研究的にも苦労することになる.