- 作者: W・T・ガルウェイ,E・ハンゼリック,J・ホートン,後藤新弥,姉歯康
- 出版社/メーカー: 日刊スポーツ出版社
- 発売日: 2010/06/23
- メディア: 単行本
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たまたま,ガルウェイの『新インナーゲーム』*1を読みなおして,テニスをするのが本当に楽しくなった.そのモデルはシンプルだ.自分を叱責し,支配しようとする「セルフ1」の妨害を消し去り,ただボールを打つ自分(セルフ2)に集中したとき,急速に学習が起こり,楽しみを味わうことができる.
そのガルウェイが医学者と組んで書いたのが,この『インナーゲームオブストレス』だ.2010年の出版だが,原典は2009年なので,迅速な翻訳だ.
人は,インナーゲームとアウターゲームの両方を戦っている.その両方のゲームにバランス良く注意を傾けることが大切だと,ガルウェイは説く.インナーゲームに安住してしまうと野田先生のいう「アホ悟り」*2になってしまうし,人が生きる意味を見出さずにひたすらアウターゲーム(自分の思うままにならないもの:たとえば仕事,家族,健康)を戦えば,地獄に生きることになる.
タイトルにあるように,この本では「ストレス」がキーワードになっている.よく言われる「高いパフォーマンスを得るためにはストレスが必要だ」ということが作り話であることを説く.プレッシャーとチャレンジは違うし,高いパフォーマンスを得るためには,いわゆる「ゾーンでプレイ」しなくてはならない.そのためはリラックスして集中するというスキルが必要だ.
そこで,最初の本から提案しているACTモデルが示される.
- Awareness:判断なしに知覚する.特にクリティカル変数に注意.
- Choice:自分が望むことをはっきり感じ取り,それに基づいて選択する.
- Trust:それを選択した自分自身の能力を信頼する.
これに従えば,むやみに懸命になることをやめることができる.そうして,自分自身への信頼を高めることでうまくいくだろう.
本の後半では,インナーゲームツールとして,日常的に役立ついくつかのコツが紹介されている.その中でも,PLEトライアングルは,重要だ.これは,Performance(パフォーマンス),Learning(学習),Enjoyment(喜び)を意味している.インナーゲームがうまく行くと,パフォーマンスがすばらしいものとなり,同時に学習が起こり,そこに喜びが現れる.この3つが同時に起こるようなバランスが大切であり,見かけのパフォーマンスだけでなく,そこに学習が起こり,喜びが付随しているかということが,インストラクターの重要な視点であることを認識させてくれる.