2023年6月9日(金)
内田若希『スポーツ選手のためのアドラー心理学』(大修館書店, 2021)を読みました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4469269174?tag=chiharunosite-22
著者は、早稲田大学人間科学部スポーツ科学科(スポーツ科学部が独立する前)の卒業生で、現在は九州大学大学院人間環境学研究院准教授。ということで期待を持って読んだのだけど、あまり得るものはなかった。とはいえ、スポーツ心理学でアドラー心理学を取り込んだものとしては先駆的な本となるでしょう。
この本では、私の『アドラー心理学実践講義』、『アドラー心理学のススメ』、『幸せな劣等感』を引用してくれていて、それはうれしいのですが。アドラー心理学はヒューマンギルドに通って学んだと書いてあります。多分、それで応用の仕方が表面的なのかなと私は感じるのでしょう。
次は「アドラー心理学に基づくスポーツコーチング」と呼ぶべきものを打ち立てて欲しいです。
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ちなみに、スポーツコーチングに心理学を導入したのは、ティモシー・ガルウェイが先駆的です。1974年にThe Inner Game of Tennis『インナーゲーム』を出版しています。
彼のモデル「セルフ1とセルフ2」は次のようです。
* 私たちの内側には、知性と感情を(コトバと感情を使って)つかさどるセルフ1と、知覚と運動を(本能のままに)つかさどるセルフ2がいる
* セルフ2を信頼して任せれば、私たちは失敗しない(失敗したという判断はセルフ1の仕事だから)
* セルフ1が「失敗」と判断する現象を、セルフ1抜きに純粋に知覚して調整することで、自ら上達することができる
* 「理想のフォームになれ」(セルフ1)という外からの要求ではなく、「自分の感覚と筋肉を感じること」(セルフ2)を示唆するのがコーチの仕事(教えるのではなく、どこに注意を向けるのかを指示するだけ)