KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

岡田斗司夫の「評価経済社会」

2022年4月1日(金)

新年度に入りました。新しい気分でがんばっていきましょう!

さて、Youtubeはよく意外な動画をおすすめに出してきます。岡田斗司夫の動画が立て続けに出てきたのでみてみると面白い。岡田斗司夫といえば『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書, 2007)くらいしか読んだことがなかったのですけれども、

岡田斗司夫『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書, 2007)
https://www.amazon.co.jp/dp/4106102277?tag=chiharunosite-22

動画でよく話題に出てくる「評価経済社会」について興味を持ったので、この本を読んでみました。この本は電子版のみで、Amazon Prime会員であれば無料で読めます。

岡田斗司夫、FREEex『評価経済社会・電子版プラス』(株式会社ロケット, 2013)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00DVN2VEQ?tag=chiharunosite-22

これがめちゃくちゃおもしろかったので、簡単に紹介します。

***

ある時代のパラダイムは何が豊富で、何か貴重であるかによって決まる。狩猟採取時代は住む場所から自由ではあったが不安定な生活だった。農業革命によって人は安定を獲得し時間が豊富になった。身分制は固定し、宗教が進展した。次の産業革命によって、人は安定を失い、合理性と宗教から生まれた科学が支配した。その結果、個人が疎外された。そして、今は情報革命が進展しつつある。それは合理性や科学を超えた、人々の「気持ち」や「感想」が無限にあふれ出る社会である。

評価経済社会とは、評価と影響を交換し合う社会である。現代は貨幣経済社会から評価経済社会へと移行している。評価はお金に変わる(例:ディズニー)。しかし、お金だけでは評価を生み出すことはできない。これからの消費は単純にモノをお金で買うということではなく、自分の好きな対象を支えるというようなサポーター的なものになっていく。

評価経済社会の中での個人のふるまいの特徴は次の3点。
(1) 他人をその価値観で判断する
(2) 価値観を共有する者同士がグループを形成する
(3) 個人の中で複数の価値観をコーディネートする

貨幣経済社会では何を買うかが最大の関心事であったのに対して、評価経済社会ではどんな価値観や世界観を選ぶかが最大の関心事になる。個人の中では複数の価値観をコーディネートすることが必要になる。そこでは1つの価値観に統一された判断主体である「近代的自我」は立ち行かなくなる。

そうすると全体をゆるやかにコーディネートするようなフィルターが必要となり、それが「キャラ」だといえる。「キャラ」は自分で設定可能であると同時に他者から貼られていくものでもある。その「キャラ」の人生は自分の時間をコーディネートして、どんな集団とどれくらい時間を使い、どれくらい深く付き合うかということで決まる。

困っている人を政府が助けるというのは幻想だ。そうではなく目の前の人を個人が助ける。さまざまな価値観が流通し、それを個人のキャラが評価し支えていくことで社会が成り立っていく。そうした人の関わり合いは、マネー経済の視点からは可視化できない。

***

この評価経済社会のアイデアを軸にして、「『いい人』戦略」そして「スマートノート」に連結して3部作が完成する形になっています。この2つの本についてはまた別の機会に紹介します。