KogoLab Research & Review

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【本】ラスムッセン『心地よさを求めて: アドラー心理学からみる感情論』(9)

2023年12月1日(金)

ラスムッセン(今井康博訳)『心地よさを求めて: アドラー心理学からみる感情論』(川島書店, 2022)の11章のまとめ。

https://www.amazon.co.jp/dp/4761009454?tag=chiharunosite-22

第11章 所属の感情

何らかの形で所属が損なわれた時に起きる。他人との関わりにおける地位を確立、あるいは再建するための行動を促すもの。

気まずさ:社会的ルールの違反にともなう感情
・目的:人前での失態を挽回するために必要な行動を促す
・信念:特定の社会的な場面ではその場にふさわしく振る舞わなければならない
・社交不安障害に悩む人の治療の1つは、社交上の完全主義という神話を払い除けること。失態を演じても取り返しがつくということにいったん気づくと気まずさへの怯えも格段に弱まる。
・アドラー派セラピーでは「不完全である勇気」を使う。完全であることは素晴らしい目標だが、人生に関しては必要条件ではない。

屈辱感:社会的ルールの深刻な違反にともなう感情
・目的:他人との交流会自分を遠ざけることで、さらなる社会位的なダメージから身を守る
・信念:社会的な逸脱は、対人関係では致命的だ
・何を気まずく、何を屈辱に感じるかは、個人として自分がどのような人間であるかによる。

羞恥心:拒絶に対する感情
・目的:社会的な拒絶や孤独から自分を守る
・信念:人が自分についてこのことを知ったら、皆自分を嫌うだろう
・羞恥心を覚えることで、人は明るみになった場合には批判や拒絶にもつながるような自分の特性に気づく。また、うながしの感情の1つとして、羞恥心は他人への同調に関わる行動に力を与える。
・羞恥心はアドラーの概念である劣等感に最も重なり、補償への努力のさまざまなあり方のほとんどを促す。
・羞恥心を乗り越えその先に進むためには、<もし〜でさえあれば>の思い込みを変え、過去を受け入れるとともに現在を最大限に生きる必要がある。

嫉妬:立場あるいは関係への脅威に対する感情
・目的:立場と親密さを守り維持する
・信念:自分を定義するさまざまな資源を持ち、それらを失ってはいけない
・嫉妬は、所属と立場に対して、他人がもたらす脅威への警戒を促す感情状態である。
・進化論的な意味では、嫉妬は生殖と防御という適応上の目的に役立つ。男性にとっては成功を確実にし(自己注目的方略)、女性にとっては防御のための資源を維持することを意味する。
・もし私たちが嫉妬を感じられなかったら、他人の中での自分の地位、自分の安全やうらづけ、さらには生殖の機会を可能にする人間関係などには、およそ無関心だっただろう。

強欲:獲得の感情
・目的:主観的な対等性を他人の中で維持する
・信念:自分に価値があるためには、他人と同じくらい、あるいはそれ以上に持っていなければならない。自分の価値は何を持っているか次第だ。
・強欲は、自分が劣っているという感覚を浮き彫りにし、何かを獲得し蓄積しないとその感覚を埋め合わせられないということを示す。

羨望:他人のものを欲しがる感情
・目的:自分から見た対等性を高める
・信念:自分に価値があるためには、他人の持っているものを持たなければならない

色欲:セックスの感情
・目的:性的な悦びと繁殖を促す
・色欲の感情のほとんどは、何らかの類の性的活動と絶頂感に関わる行動を動機づけるが、実際繁殖につながることはずっと少ない。
・色欲のコントロールを学ぶことは、人生のタスクのうち、愛・親密さのタスクの重要な側面である。

傷心:傷ついた自己という感情
・目的:個人に対する侮辱に気づかせる
・信念:自分に価値があるためには、他人からよく扱われなければならない
・他人によって傷つきやすい人は、他人からよく扱われたい、自分の価値や自尊心を覚えるために常に誰かに強く依存するといった特徴を持つ。

罪悪感:関係維持の感情
・目的:関係についての同意に反していることを知らせる
・信念:他人との関係における責任・役割を自分は果たさなければならない

憤慨:公平さを求める感情
・目的:自分から見た対等性を維持する
・信念:自分が責任を果たすなら、私が彼(女)らの責任だと思うものを他人も果たすべきだ

失望:不満足の感情
・目的:失敗に終わった結果を知らせる
・信念:物事は自分の思い通りにいくべきだ

私たちは他人と持っている関係の性質によって、多くの重要な点で自分自身を定義している。こうした中で感じる連帯や所属の感情がなければ、私たちが他人に対して、また他人がこちらに対して負う義務をないがしろにしてしまうだろう。所属の感情は、集団がうまく機能するのに必要な義務を各メンバーがきちんと果たせているかのフィードバックをもたらす。

一方で、所属の感情の基盤となる、適切な社会行動に関して人々が儲けるルールが時として偏っていて不合理なことも多い。