個人が自分のWebページを開く理由は何だろうか?
「情報発信」といった言葉がその回答として持ち出されるけれども、ハズしていると思う。だいたい情報発信とは何だ? これほど空疎な言葉もないだろう。学校や教育界で実体のないままに流通しているジャーゴン(隠語)である。こういう言葉を使う人はたいてい自分のページを持っていない。自分のページを持っている人は「情報発信」などという言葉はけっして使わない。彼らのページは「情報発信」なんかではないからだ(注)。
(注)しかし、川浦(1997)がWebページ開設者にメールでおこなった調査では次の結果が出ている(n=211)。
- 自分なりの情報発信 78.7 %
- 気軽な発信手段 67.8
- どんなものか試したかった 67.3
- 他人の反応がほしかった 36.5
- 見知らぬ人との交流 32.2
- 世の中で流行っているから 27.5
- 自分のことを知ってほしい 22.3
上位1,2位で「発信」という言葉が使われている。
個人が自分のWebページを開くのは、「自分自身を整理するため」であるという仮説を立ててみたい。こういう言葉遣いそのものが新奇なものなので検証するのは難しいかも知れない。自分を整理した結果として「情報発信」や「自己表現」になっているとしても矛盾はないからだ。しかしここでは「オーガナイザとしての個人ページ」ということをいってみたい。いくつかの切り口があると思う。
ひとつは、個人ページを開いている人とそうでない人の、ネットワークに対する感じ方の違いである。もし個人ページがオーガナイザとして働いているならば、開いている人はネットワーク全体を自分なりに秩序づけたものとしてとらえるだろう。一方、開いていない人はネットワークを混沌としてとらえどころのないものとして感じているだろう。
ポータルサイトというのが注目を集めている。自分がネットワークを探索するのにまずはじめの一歩としてアクセスするサイトという意味らしい。しかし、自分のページを持っている人はポータルサイトは使わないだろう。自分自身でカスタマイズしたリンク集があるからだ(個人ページの中にリンク集がない例は少ないだろう)。おそらくリンク集を編成することでその人は自分なりのネットワーク体系を作るのだ。
- あなたのリンク集を見せてごらん。そうしたら私はあなたがどんな人であるかを言い当てて見せよう。