KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

教育工学会@富山大学:2日目

 大会2日目。会場も順調に回り始めたので、発表を聞く。面白そうな発表を求めて、部屋から部屋へと渡り歩く。部屋は2階から4階に分散しているので、足腰の運動になる。昼休みを利用して、メモをここに書いておく。

■芥川元喜(山梨大)小学生における「教育的リフレクション」の事例研究

 深い学習を促す「ふりかえり」を促進するような教育的介入がある、と。それには生徒と先生の信頼感が重要であるようだ。私の質問:まるで信頼感を独立変数のように扱っているが、信頼感というのは従属変数ではないのか。

■柴田好章(上越教育大)授業におけるコミュニケーションの諸相と出現語の多様性

 授業における生徒と先生別の発言キーワードの累積グラフによって授業の構造がわかる、と。発言の累積グラフはまるで条件づけの実験におけるグラフにそっくりで、ふとにやりとしてしまう。いろいろな意味で。

■保崎則雄(神奈川大)実践報告:映像メディアで教える自己表現

 大学生対象の映像表現教育の実践では、制作者の意図、視聴者の理解、映像表現の技術の3点が重要、と。私の感想:この3点は、映像表現だけでなく、文章表現でも共通だなあ。

■宮田仁(滋賀大)アンカー教授法によるProblem-oriented教材の設計と開発(1)

 日本心理学会でBransfordが紹介していたジャスパー教材を使った実践例。アンカーとは問題解決の状況ということ。「速さと時間」という内容を「ブーン湿原に急げ」というストーリーに展開する。参考になる。大学教育でも応用可能。ポイントは迫真性のある問題設定と、リッチな情報環境(映像、地図など)か。

■森石峰一(帝塚山学院大)Thinking Toys

 甲南女子大の上田信行さんのパフォーマンス。レゴとそれを制御するプログラム環境を使って、1メートルを1-2分内にきっちり走るロボットを作るという課題。教育には「触発するような小道具」が必要と力説。おもちゃは買ってくるものではなく、作るものだ、と。

■三尾忠男(メディア教育開発センター)大学教員のティーチング・ポートフォリオの作成支援に関する研究報告

 授業評価を毎回学生につけてもらう。その回数による変化によって授業全体の構造がわかる、と。グラフを見ると、評価項目が違っても固まっているのが見て取れて印象的(→授業には「良い-悪い」軸しかない?)。私の展開:授業のたびに評価データを取るのは、しつこいが、その授業の内容や形式を独立変数として操作すれば、実験計画として成立するかも。

 余談だが、今大会のふたつのシンポジウムを見ると、「総合的な学習と情報教育」と「21世紀における情報アクセスの技術と倫理」という内容だ。学会のシンポジウムとしては、あまりポリシーメイキング寄りの話題に偏っていないだろうか。「不易と流行」の流行の部分だ。基礎研究への目配りをちゃんとしないと、長期的にはだめなんじゃないか、と思う。