KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

大福帳方式で授業を改善する

教育心理学会2日目。

午前中は、ポスター発表をざっと見た後、自主シンポジウムに途中から参加。「総合学習」についてのシンポジウムであったが、参加者は少なかった。20人くらいだったろうか。これが、教育工学会であれば、大勢の参加者が集まるところだ。

午後は、私も話題提供をする自主シンポジウム「Faculty Developmentと教育心理学」。敬和学園大学の益谷真さんが企画した。

話題提供は、「当日ブリーフレポート」の宇田光さん(松坂大学)、「Researcher-Like Activity」の市川伸一さん(東京大学)、「大福帳方式」の織田輝準さん(三重大学)、そして「個別化教授システム(PSI)」の私、ということで、大学教育を考える心理学者としては最強の布陣(かもしれない)。

とはいえ、ここは教育心理学会。総合学習と同じく、あまり人が集まらないのではないかと心配された。また、同時間帯にR. E. Mayerの招待講演が開かれたこともある。でも、結局、40人くらいは集まってくれたので、よかった。

織田さんの「大福帳」は有名で、いろいろなところで引用されているのだが、ご本人から直接話を聞くというのは、何かしら強く訴えるものがある。こういうアイデアというのは、その人柄というか、教育についての考え方が背景にあって、そこからわいてくるものなんだなあと印象づけられた。織田さんの考え方というのは、「授業を改善したければ、学生に聞くのがいい」ということだ。

大福帳というのは、授業を受けて、言いたいこと、聞きたいこと、伝言などを学生が書き、それに教師が返事を書いて返していくシステムだ。A4判の厚紙に14回分の欄が印刷してある。そこにはこんなコピーが。「よりよい授業へのアプローチ。あなたも、わたしも、参加者です」。「甘すぎず、柔らかすぎず授業のおいしい関係をめざす」。これは織田さんの教え子のコピーライターが提供してくれたものだという。

授業の最終回に一回だけ授業評価をやるのでは不十分だということに気がついて、大福帳を考案したという。大福帳は「授業改善の持続を維持する方法」になるという。私も後期の授業でこれを試してみたくなった。「使うのなら100枚くらいは送ってあげる」と言われた。うれしい。やってみよう。

授業について書く、という意味では質問書方式に似ている。しかし、限られたスペースに書くので、本当に書きたいこと1,2点に絞られることや、教師が毎回個別に返事やコメントを書くというところが違う。また、学生にとってはこうしたやりとりが累積していく様子が一目でわかり、授業への熱意が高まるという効果もある。

今回のシンポジウムは、司会とタイムキーピング、それから、益谷さんの学生さんによる「リアルタイムメモ」がすばらしかった。リアルタイムメモというのは、発表者や質問者が話しているその場で、内容の要約メモをとり、それを直接パワーポイントに書き込み、プロジェクタで投影していくというもの。質問も活発に出た。特に現職の小学校・中学校教員からの質問も出て、「教師 兼 研究者」というタイプの人たちが増えてきていることを予感させた。すばらしい。