KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

クリス・アンダーソン『フリー』

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

  • p.56 クロポトキンは1902年の著作『相互扶助論』の中で、ある意味では、今日のインターネットという<リンク経済>を支配するいくつかの社会的な力を予想していた。人に何かをあげることは、お金のためではなく自己満足のためだと彼は言ったのだ。その満足はコミュニティや相互扶助や支援に根ざしている。すすんで他人を助けることで、相手も同様にふるまうようになる。「原始社会」はそのように動いていたとクロポトキンは主張した。贈与経済は市場経済よりも、人間の自然の状態に近いのだと。
  • p.82 サボはこれを購買決定行動にまで拡大した。彼は<マイクロペイメント>というアイデアについて研究した。たとえば、ウェブページの閲覧を1ドルにしたり、連載マンガのダウンロードを数分の一ユーロにするといった少額の支払いを可能にすることにで、ビジネスを成立させようとする決済システムだ。そしてサボは、そのようなビジネスモデルはすべて失敗する運命にあると結論づけた。なぜなら、選択肢の経済コストをいくら最小にしても,認知作業のコストは残るからだ。
  • p.213 フラット・ワールド・ナレッジ(FWK)という出版社の<オープン・テキストブック>がそのモデルになるだろう。編集もアップデートもできて、いくつかを組み合わせてカスタマイズもできる無料教材だからだ。
  • p.243 学位はユーチューブを見ていても取得できないという当然の違いに加え、大学教育はそもそも講義と読書だけではない。授業料を払うとは、ミュラーのような教師に質問をし、アイデアを共有して、指導を受ける権利を買うことと同義なのだ。また、学生のネットワークに加わってアイデアを交換し、助け合い、関係を築くこともできる。大学側とすれば、優秀な学生に自分の学校を選んでもらいたいので、無料コンテンツをマーケティング手段としているのだ。