KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

「マンガ・シンポジウム」の報告

筑波大学で開かれた、教育心理学会の大会に参加してきました。今年は、教育工学会の大会(金沢)などとぶつかったせいでしょうか、参加者が少ないように感じました。しかし、最終日のマンガ・シンポジウムには、20人以上の出席者があって、まずはほっとしました。

シンポジウムは、まず4人の話題提供者から25分程度の話をいただき、その後フリーディスカッションの時間をとりました。

中澤さんからは、包括的なイントロダクションをもらいました。「ドラエモンは子どもの水戸黄門」、「一般的な思いこみに反して、マンガをよく読む子どもは本もたくさん読んでいる」など研究心を刺激するようなアイデアが出てきました。邑本さんからは、読み理解の研究がマンガの読解過程研究に応用できるのではないかということから、具体的な実験例を紹介してもらいました。村田さんと向後(智)さんからは、これまでになされた実証的な研究を紹介してもらいました。

続くフリーディスカッションではいろいろな問題やアイデアがでてきました。ここでは早急な結論を求めることはせずに、研究のネタとしてそれらの問題を列挙しておきますね。こうした問題に回答できるような研究がされていくといいと思います。

マンガを授業レベルでどう扱うか

すでに、教科書にドラエモンが出てきて、しゃべる時代になっている。そうした状況の中で、マンガを「入口」的に使って行くだけでいいのだろうか。マンガを利用するときに注意すべき点、あるいは効果的に使うための方法があればそれを明らかにする必要がある。

文学古典のマンガ化

中央公論社から出版されているように、古典がマンガ化されることが増えている。その中には、マンガ自体が独自の世界を作っているようなよい作品から、ただ原作をそのまま絵にしたようなものまであるようだ。古典のマンガ化は前述の「入口」として利用できるが、それだけでいいのかという疑問もある。

マンガリテラシーはあるのか

これまで認知心理学では、文章になったものの理解を中心に研究を進めてきたようだ。しかし、現実には演劇の理解や映画の理解、そしてマンガの理解というような領域があり、それらにはまだあまり研究の手がつけられていない。また、マンガリテラシーというときには、マンガ文法についてのコンセンサスが形成されることが必要だが、それはどのようにしてなされるのか。

まとめれば、マンガは研究領域として非常に魅力的であり、成果を応用する範囲が広いということ、また日本では特にマンガ文化が成熟しつつあり、研究がやりやすいことがあります。これを機会に、マンガ研究メーリングリストなどを作って、研究者間の情報交換などをしていこうと考えています。関心をお持ちの方は、連絡下さい。