KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

お子様甘口カレー談義

 少し前の日記で「甘口カレーは子どもを甘やかしているのではないか」という、いかにも無理な主張をしてみました。それに対して、予期せずたくさんの反響をいただきました。食文化というものを考えるのにいい材料が集まったので、ここに再録しておきます。ありがとうございました。

 まずエリンさんのメールから(掲載許諾ずみ):

今日の「甘口カレーにみる日本の甘やかし」を読んで、お子さんには幼児用のレトルトカレーを使えば一緒に甘口カレーを食べなくてもいいのでは、と思ってしまいました。家の方針でレトルト物は使わないというのであれば、仕方がありませんが、今時のレトルトの幼児カレーは種類も豊富でおいしいです。子供も喜んで食べます。そうでなければ、ちはるさんが辛口のレトルトカレーを食べるとか。家庭によっては2種類作るところもあるそうです。

甘口辛口はともかく各家庭の味というのがあって、日本は和食を主とすればあまり刺激の強い物は合わないのではないかと考えられます。和食はもともと料理に香辛料より砂糖を多用するということもあり、日常的に辛いものは食べません。少なくとも大人になれば辛いものは慣れで食べられるようになります.。舌を敏感にするためにも薄味でというのが日本の主流です。

>お子さまだから辛くないものにしておけばいい、というのは大人の思いこみで
>はないか。それもかなりはた迷惑で、子供を見くびったものだ。つまり甘口カレーは
>日本の甘やかしの原点であるという、そういう無理な仮説を立ててみたい。

確かに味覚は作られるものです。小さな頃から辛いものに慣れ親しめば、幼児でも中辛カレーとか柿の種が大好物という子もいます。辛いものを食べるお国柄では親がまず日常的に辛いものを食べています。そうなると子供は辛いものを食べた母親が出す母乳を飲んで育ちます。母乳は母親が食べたもので味が変化するそうです。だから乳児の頃から辛いものを食べる下地が作られていると言っても過言ではないと思います。

日本人が何故こんなにもあらゆる国の料理をとりいれて、食文化を発展させているのかはやはり和食によるところが大きいと考えています。いろいろな味を敏感に感じ取ることができるというのは、いろいろな世界の料理を楽しめるということだからです。

カレーが甘口なのも香辛料を多く使わないからで、幼児食は甘くしているのではありません。もちろん、故意に甘くしてあるのもありますが、だいたいは「薄味」が基本です。薄味にする事によって、いろいろな味をわかるようにするためです。ですから幼児の頃は大人並の味付けにするより、薄味にした方が良いと言う事で決して甘くしているのではないとお考え下さい。勘違いをして「子供の食べ物は甘いもの」と思いこんでは成長と共に弊害が大きいでしょう。よく取り沙汰されて困るのは、子供にお菓子をジジババが与えすぎる事ですね。それはまさに甘やかしだと思います。

 確かに味覚は作られるものかもしれないです。そうすると薄味文化に育った私たちはそれを大切にするべきかもしれないなあ。話はちょっと経済寄りになるかもしれないけど、ハンバーガーのマクドナルドが子供を取り込む戦略を取っているのは非常に示唆的ですね。味覚(の好み)は子供の時から作られるということを考えると。

 わきわきさんより(以下掲示板から):

我が家では「こくまろカレー 甘口」とか「カレークイック 中辛」とかですね>こども。「カレーの王子さま」とかまでお子さま向けカレーは作ったことなし。さすがにルーは控えめにして出して、子供らは水をがぶがぶ飲みますが、1歳半でもなんとか食べられるようです>大人向けカレー甘口

1歳半がワサビの塊を口にして思わず絶句して突っ伏した時は、さすがに脳細胞に悪影響が出たのでわと思ってしまいました(^^;)

 ワサビの味がわかるようになるというのはどういう発達(あるいは学習)なんだろうか? 大人でもワサビがダメで寿司屋でワサビ抜きを頼んでいる人がいたりしますが。ちなみにタイでは、ワサビも好みます。それも半端じゃない。山盛りのワサビに醤油をかけるという感覚で使っていました。これには度肝を抜かれた。

 さて、タイカレーの話に移ります。

 わたなべさんより:

個人的にタイカレーが大好きなんですが、パナンカレー(<大好物)やイエローカレーは比較的甘いですよ。多分タイ人にきみの国に甘いカレーはないだろう、というとこれらの名前が返ってくるのではないでしょうか。ご存知かもしれませんが、色的にグリーン、レッド、イエローの順に甘くなります。ちなみに、手元にあったパナンカレーベースの袋を見たら"The Tangy, Sweet Curry"なんて書いてありました。でもイエローカレーでも日本のカレーの辛口くらいの辛さのような気がするので、「甘いカレーはないはず」というちはるさんの指摘は、われわれの尺度での「甘い」カレーはない、という意味で僕も同感です。

Shiroさんより:

私もタイ料理は好きで、"Mild" "Medium" "Hot" の指定があるレストランでは大抵"Hot" を頼みます。だから本格タイ料理も大丈夫、と思っていました。実は、メニューに載っていない、 "Thai Hot"というランクがあるのを知ったのはしばらく前です。一口食べたら、味覚が麻痺しました。

韓国人で、日本にも数年住んだことのある友人は、「日本に最初に来た時、日本料理は全然味がしないんだって思った」そうです。ところが日本でずっと暮らして和食ばかり食べていて、たまに韓国に帰ると「今度は本場の韓国料理が辛すぎて味がわからないんだ」と言っていました。人の味覚のダイナミックレンジには限界があり、辛いのに強い人は薄味のほうの弁別ができないんじゃないか、と仮説を立てています。

 グリーンカレーには甘いココナッツミルクがどっさりはいっているので、一瞬「甘辛?」のように舌がだまされますが、あとで辛さがど〜んと来ますね。Shiroさんの「味覚のダイナミックレンジ」仮説はもっともらしそうです。

 最後にインドと韓国の話。

 岡島昭浩さんより:

昔、探偵ナイトスクープの中で(小ネタ集でしたか)、「インドの幼児むけ料理はやはり辛いのですか」というのがあり、桂小枝が日本にいるインド家庭で食べさせてもらい、「辛くなーい」と叫んでいた記憶があります。カレーではないものを食べさせておいて、いざカレーとなると、辛くするのでありましょうか。

 よんひゃんさんより:

すべてが辛いわけじゃないですが、キムチをこどもに食べさせるときは、食卓に水を入れたおわんなどを出して、そこで洗って食べさせます。わたしもこの調子で、幼稚園くらいからキムチを食べてました。でも、日本の幼児むけカレーは確かに甘すぎますね。うちは、大人用と子供用、2種類作ります。

 キムチを水で洗うという話は初めて聞きました。インドでも子供用のカレーは辛くないようです。

 ということで結論:

辛い食べ物を日常的に食べる国々でも子供にはマイルドにしたものを食べさせている。それを考えると日本の子供向け甘口カレーを簡単に非難することはできない。