KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

「未来日記」に大いにウける

 ブロードキャスターで紹介されていた「未来日記」という企画を見て、大いにウけた。私は未来日記の元ネタの番組を見ていない。未来日記を簡単に説明すると、お互いに見知らぬ二人が引き合わされ、それぞれに手渡された「未来日記」というシナリオに沿って演技をしてもらう。そうすると、あら不思議、気づかないうちに二人には恋愛感情が生まれてくる。番組はその二人の心の動きを逐一視聴者に伝えて、番組とするわけだ。

 後楽園遊園地では、未来日記をモチーフにした遊びを提供していて、それは長蛇の列ができるほどの人気アトラクションになっているとのこと。それは、カップルの状況に応じて、待ち合わせ場所を指定したり(これで、相手が自分のことをどう思っているのか推測できる)、パラシュートみたいな乗り物の中で「キスをする」といったシナリオを実行させたりするものだ。いずれにしても、カップルになってからでも、なかなか面と向かって相手に尋ねにくいことを聞いたりするといった行動の後押しをする、という意味では面白い。人間、行動するには何かきっかけが必要で、それをお手軽に提供しているというのが、人気の原因か。

 しかし、会ったこともない相手に対して、シナリオ通りの演技を続けていくだけで、恋愛感情ができてしまうものか、という疑問はある。

 これは、十分ありうるだろうね。よく、テレビや映画で、配役上のカップルが、お互いに相手を好きになってしまうということもあるようだ。心理学的には、ただ一緒にいるだけで好意を抱きやすい(単純接触効果)ということがあるのだから、その上に、よくできたシナリオがあれば、恋愛物語の主人公になりきることくらいは、たやすいことなのではないか。それから、初対面の相手とシナリオ通りの演技などという、冷静に考えればバカバカしいことを自分がしているのは、ひょっとしたら「本当に」この相手のことが好きなのかもしれない。そう思わなきゃやってられないでしょう(認知的不協和の解消)ということもある。そう考えると、この企画は心理学的によくできている。心理学もこちら方面に利用すれば、お金儲けができるんだけどな。

 まず行動を先にすると、そのあとから感情や思考が追いついてくる、という普通とは逆のことを体験する企画といってもいいかもしれない。「まず、やってごらんよ。そのあと、どう感じたかを話してみて」というやつですな。ちょっと怪しげだけれども、この体験はやってみる価値がある。普段私たちは、考えたり感じたりしてから、行動をしたり、しなかったりするわけだけれども、その順番を逆にするわけだ。「まず行動して(体験して)、そのあとに考えてみよう」というやつ。うまくデザインされていれば、これは新しい体験になる。下手にプログラムされていると、悪徳商法などに悪用される。

 未来日記を体験したカップルのその後はどうなるのだろう。結婚するカップルはでてこないのではないか。それは、与えられたシナリオがうまくできていればいるほど、また、カップル同士がすばらしい演技をすればするほど、逆説的だが、結婚しようとするカップルはいないだろう。なぜなら、そこで物語が完結してしまえば、もう現実の結婚なんてものは必要ないのだから。それを見越した上で、この番組を作っているのであるとしたら、良心的である。しかし、不出来なシナリオにしたがって、下手な演技をしたらどうなるのだろう。それを見てみたい。単に好奇心として。