KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

eラーニングワールド

eラーニングワールド2005(http://www.elw.jp/top.html)に行ってきました。講師として話をしてきたのですが、eラーニングということばの華やかさとは別世界のような、Bateson流「第二次学習」やらKnowls流「成人教育学」などの地味な話をしてきました。聞きに来てくれた人は面食らったかも知れないなあ。ともあれ、聞いていただいた方、ありがとうございました。

私としては、昨今のeラーニングブームはとても良いことだと思っています。なんにせよ、インターネットやパソコンにインストラクションを乗せることによって、そこで起こっている教授と学習はいったい何なのかが、教師と学習者という関係の中に隠蔽されるよりは、明らかになるだろうと思うからです。認知心理学がプログラムによるシミュレーションモデルで人間の認知プロセスを明らかにしようとしたのに似ています。インターネットはいわばテストベッドですね。

そうやってもう一度見直してみると、もうここをやるしかないだろうというところがみえてきます。それは、自己決定学習であり、グループワークであり、メンタリングやコーチングであり、そこで学んでいないものをどう学ぶかということといった課題です。これらの問題はeラーニングの枠組み以前に前から研究されていることなのですが、eラーニングという枠組みの中に置き直したときにさらに解明が進むのではないかと期待されるのです。でもその前に、地味な実践の積み重ねが必要なのですね。いまだ、私には開けた道は見えていないのです。

講演はいつもそうなのですが、少々疲れます。たぶん、「レクチャーは一番効果の低い教え方だ」ということをレクチャースタイルで訴えるという逆説的な行為に無責任さを感じてきたのかも知れません。もう講演は、ワークショップスタイルでしか引き受けないようにしようかと考え始めています。

でもしっかり聞いてくれる人はいる

でもしっかり聞いて、深い理解をしてくれる人もいるのですね。たとえば、もう1人の講師である中井さんが、「成人教育においては、コーチは受容的であるよりは、指示的に振る舞った方が良いことがある」と言ったのに対して、「それは向後先生が前に言った、上位相補的に振る舞え、というのと矛盾するのではないですか?」と質問してきた人がいたのですね。うん、これは深い理解をしていなければできない質問なので、レクチャーを聴いただけでも深い理解をする人はいるのだなあと思ったりもしました。