学生参加型の大学授業―協同学習への実践ガイド (高等教育シリーズ)
- 作者: D.W.ジョンソン,K.A.スミス,R.T.ジョンソン,David W. Johnson,Karl A. Smith,Roger T. Johnson,関田一彦
- 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
- 発売日: 2001/12
- メディア: 単行本
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従来、学校で学んできたことのなかには「実社会」で役に立たないことが多くあります。学校で教えているのは、次のようなことです。学習は基本的には1人でするものであり、他者に対する手助けや支援というのは欺瞞である。専門能力だけが価値あることで、授業を休まないことや時間の厳守は試験の得点ほど重要でない。学習の動機づけは教員次第である。成功はテストの成績いかんである。そして、たとえほとんど勉強しなくても進級できる。
実社会における仕事は、まったく異なっています。経営者が従業員に期待しているのは、彼らが並んで座り、互いに関わり合うことなく競争することではありません。仕事の「核心」、とくに給与が高くおもしろい仕事の核心はチームワークです。チームワークには、協同して仕事にあたるときに人々の協力をとりつけ、他者を導き、こみいった勢力や干渉に対処し、同僚の抱える問題の解決を助けることを必然的に伴います。まち、チームワークには、コミュニケーション、効果的な協調関係、分業がつきものです。
この本を読んで、協同的な学習が、競争的なものよりも、個別的なものよりも十分に効果が高いものであることも、そして、それがこれからの社会のために必要なことであることも納得できます。しかし、さらに重要なことは、ただ、協同学習をやってみようとして試みるには、この方法は従来の指導法の何倍もの準備と周到なデザインが必要であり、何よりも教員自身に強固な信念が必要だと言うことです。つまりうかつに手を出すなということです。私自身振り返ってたくさんの反省する点を見いだしました。この本は筋金入りです。
この方法を導入する前に、私たちが互恵的に相互依存している存在であることを、教員も学習者も徹底的に納得しなければいけません。生半可にやれば、「ただ乗り効果」や「お人好し効果」の前に不満が渦巻き、より悪い不信感を残してしまうでしょう。
どこがつまづきなのか。それは今の大学の評価システムがこの本の持つ哲学と矛盾しているからです。たとえば協同学習をするには、規準準拠の評価システムと学習契約のシステムでなければなりませんが、今の大学は逆にGPA制度導入の方向に進んでいます。