KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

【本】ラスムッセン『心地よさを求めて: アドラー心理学からみる感情論』(10)

2023年12月25日(月)

ラスムッセン(今井康博訳)『心地よさを求めて: アドラー心理学からみる感情論』(川島書店, 2022)の12章のまとめ。

https://www.amazon.co.jp/dp/4761009454?tag=chiharunosite-22

第12章 撤退の感情

これらの感情の状態は、通常の活動から遠ざかることと関連し、個人が直面する喪失の原因を振り返らせる。

悲しみ:喪失の感情
・目的:自己定義的な出来事、人々、そして結末を振り返る。
・信念:人生にはなくてはならないものがある。
・悲しみに伴う撤退を通じて、人は物理的にも情緒的にも状況から離れることができ、防御や自己増強のための情報を探ることができる。ゆっくりとものを考えることが必要なとき、悲しみはそうした機会を与えてくれる。

悲嘆:深刻な喪失の感情
・目的:他人との関係や人生の大切さを知らせる。
・信念:人生にとってとても重要で、大事にすべきことがある。
・人は悲嘆の経験を通じて、さまざまな形をとる喪失(とりわけ死)が常に変わらずあり続けることを悟る。進化論的には、悲嘆は生存の要求を強める感情である。もし死を避けるために死そのものを経験しなければならないとしたら、その避け方を学ぶことはできない。

憂うつ:撤退の感情
・目的:勝つことのできない闘いから退かせる、絶望的な状況からの退却をうながす。
・信念:自分は人生で欲しいものを得られないのだ。
・誰もが憂うつの感情を覚えるものだが、これは悪いことではない。もしそうでなかったら、私たちは手に入らないものを追いかけ、決して勝てない闘いに身を投じ続けてしまうだろう。
・憂うつは絶望的な状況から撤退するという進化論的な行動原理を満たすが、本人が思うほど絶望的でないことも多い。
・うつを患う多くの人は、沈んだ気持ちから抜け出すために必要なことをするよりは今の状態に足掻いていたい、これ以上の失望や失敗に見舞われたくないと考える。
・男性は憂うつを怒りとして表す傾向があるのに対して、女性は悲しみや涙脆さ、そして撤退という典型的な形を取りやすい。
・もし憂うつを感じなかったら、私たちは少なくとも現時点で持っているスキルや責任の範囲では勝つことのできない闘いに留まり続けるだろう。