KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

「人生に必要な荷物いらない荷物」ディック・J・ライダー、デイブ・A・サピーロ

人生に必要な荷物 いらない荷物 (サンマーク文庫)

人生に必要な荷物 いらない荷物 (サンマーク文庫)

こんな本

ときどき、ふと旅に出たくなる。誰でもそうだろう。特に、やらなければならない仕事に追いかけ回されたり、逆に、何も面白いことがなくてひまを持て余したとき、また、人間関係に気を使うのでほとほと疲れたときなど、無性に旅に出たくなる。旅に出たくなるのは、自分自身を取り戻そうとするからだ。見も知らないところに行って、ゆったりとした時間の中で、自分の生き方を見つめなおすためのチャンスが、もう一度欲しいのだ。

旅にあこがれるのは、日常が重く、だるく、つらいからだ。でも、よく考えれば、自分がこの世に生まれてきて、今に至るまで生きてきたのも、ひとつの旅だと言える。それにしては、日常という旅が、こんなにも面白くないのはなぜなのだろう。振り返ってみると、子どもの頃は、毎日が旅というのにふさわしい冒険に満ちたものだったことは間違いない。それが、大人になると、毎日が暗く、扁平になる。それは、自分が背負っている、人間関係や仕事やしがらみや世間体が、ひどく重くなり、それを運ぶだけで疲れてしまっているからなのだ。

人生が旅だとすれば、誰でもカバンを持っている。それは、仕事のカバン、愛のカバン、場所のカバンだと著者はいう。このカバンの中に、人はなんでも詰め込んでしまいたがる。そして重量オーバーで身動きがとれなくなる。荷物を運ぶだけで人生を終わってしまわないために、ときどき自分のカバンの中身を点検して、いらないものを捨てて軽くする必要があるのだ。

あなたは、自分自身で、自分の居場所を決めることができるし、自分が誰と一緒にいるかを決めることができる。そして自分の才能を活かすような仕事を選ぶことができるのだ。

自分の荷物を軽くするために

自分の荷物を軽くするために、まず次のことを考えてみるといい、と著者はいう。

(1)  なぜ、この仕事をしているのだろうか?/(2) なぜ、この人間関係にかかわりをもっているのだろうか?/(3) なぜ、ここに住んでいるのだろうか?/(4) なぜ、これが自分の目的だと思っているのだろうか?/答は簡単ではない。単に考えたからといって、物事が変わるというものでもない。でも少なくとも、考えてみるということは大きな一歩である。自分の荷物を軽くしたいと願うすべての人が、踏み出さねばならない一歩なのだ。(p.77)

友だちでない人と一緒にいる必要はない

自分の周りにいる人は、全員が自分の友だちだろうか。そんなことはない。小さいときから、「みんなと仲良くしなさい」といわれ続けてきたために、人間関係で身動きがとれなくなってはいないか。一緒にいて、あまり愉快な気分にならない人と、一緒にいる必要はないのだ。自分には自分の居場所を決める権利がある。人は、たった一人だけでも、心の友だちと呼べる人がいるならば、楽しく生きていくことができる。

高校生の頃、僕はほとんど泣きながら帰宅していた。いじめっ子の一団がいて、いつも僕に嫌がらせをしていたんだ。・・・/とうとう母が尋ねた。/「そんなに辛い思いをしながら、どうしてそんな人たちのそばにいるの?」/「だってお母さん、みんな友だちなんだもの!」/それから何年かして、あるがままの僕が好きだといってくれる人に出会って初めて、高校時代の連中は本当の友だちではなかったということがわかった。・・・連中は、友だちでない人と一緒にいる必要はないということを教えてくれた。(p.139)

時間が足りない

なんでも速くやればいいというものではない。物事には、それにふさわしい時間のかけ方がある。しかし、次から次へとこなさなければならない仕事が目の前に並べられると、そんなことを考える余裕もなくなる。この仕事は本当に自分がやるべき仕事なのかどうか、立ち止まって考えてみることも必要だ。この仕事こそ自分がしなければ、と思っているのは本人だけであったりすることがよくある。自分がなすべき仕事を、メンツや安いプライドやただ頼まれたからというので決めるのでなく、自分の心と相談して決めよう。それはあなたの仕事かどうか。そうすれば、次のように、時間が足りなくなることもなくなる。ときどき、ぼーっとする時間があるくらいが、ちょうどいいのだ。

しかし、今日のテレビとコンピュータ文化のなかで、物事を長期的に考える人などいるだろうか? いつもいつも、時間が足りないように思える。自分のための時間は以前より少なく、お互いのための時間はもっと少ない。じっくり考える人や、ゆっくり話す人と一緒にいるとイライラしてくる。すばやく運転し、すばやく恋をし、マクドナルドのハンバーガーは十五秒以内に出てこないといけないと思っている。(p.167)

終わりに

ときどき、自分の荷物を点検して軽くする。それをしなければ、荷物はただひたすら重くなっていく。重い荷物を持ったままでは、冒険はできない。自分の人生を、冒険のある旅にしたいのならば、荷物を選ぶことが必要なのだ。荷物の軽さは、心の軽さと毎日の楽しさに反映する。