……なんだ、このタイトルは?
予定通り、三日間の集中講義が始まったんだけどね。その受講生がみんな制服だったんだよ。
……確か、看護学校の学生さんだったね。
そう。高校を出て、看護婦(看護士)の見習いをしながら、学校に通っているので、みんな20歳を過ぎている。私よりも年上の人もちらほらといるくらいだ。その人たちがみんな、白のブラウスに紺のスカート(男性は白のシャツに紺のズボン)を着て、コンピュータルームに集まってきたんだな。最初は高校生かと思ったくらい。よく見ると、みんなお化粧をしている。
……それに欲情した?
なんだかミョーな感じなんだ。制服を着ている学生さんに授業をすることはめったにないのでね。落ち着かない。それで「明日からは私服でかまわないから、自由な服装で来てください」と言った。
……へえ。制服の方がキミの好みなんじゃないの。
嫌いじゃない。それどころか、シンプルで清楚な制服に、みずみずしい身体が包まれているのを目にするのは、実に幸せだ。いや、いやらしい意味でじゃなくてよ。まあ、いやらしい意味でもいいけど。
それで思ったんだけど、男はなぜ制服に欲情するのだろうか、と。学生の制服以外でも、スチュワーデスの制服とか、ウエイトレスの制服とか、会社の制服とか、なんか欲情させるものがあるよね。
……確かにそうだ。それを考えると、たいてい制服がある中学校や高校の男性教師は大変だね。自分を制するのが。キミは大学の教師でよかったな。
あ、そこらへん、深いつっこみはナシね。……で、「制服の欲情喚起性」について考察してみるとね。
……聞いてあげようか。
もともと制服はそれを見た人に清潔感を与えるようにデザインされている。機能的でシンプルだ。まあ、それが第一の理由だろう。
それ以外の理由を二つ考えた。一つ目は、制服が個人差を覆い隠そうとし、そのためにかえって個人差が目立ってくるということだ。個人差は外見上の服装を揃えたところで隠せるものではない。顔も違うし、体型も違う。声も違うし、髪型も違う。服装を同じものにしたことによって、こうした個人差が際だってくるということ。個性の再発見ということかな。個性というのは何も、着ているものや、化粧の仕方、持ち物といった外的なことではなくて、その面構えや話し方や話す内容なんだ。制服を着せると、それがはっきりわかる。その個性がセクシーということなのではないか。まあ、もちろんセクシーでない個性もあるわけだけど、たいていの個性はセクシーだ。そして、すべての没個性はセクシーではない。
もう一つは、制服が恭順の表明であるということだ。服従といってもいいかな。指定された制服を自分が進んで着たという時点で、すでに恭順の意を示しているわけだ。恭順を示すものに対しては、支配欲がわいてくる。まあ、制服を着たからといっても、本当は「その職務に対して」恭順なのであって、たまたまそこにいたあなたに対して恭順であるわけではないのだけれどね。でも、そこはたいていの人が誤解するわけだ。スチュワーデスのお尻を触ったりね。
以上の二点を組み合わせると、こうなる。制服はその人の個性を際だたせる。際だった個性はセクシーである。同時に制服は相手に恭順であるという印象を与える。全体として、セクシーな相手があなたに恭順の意を表明しているという構図になるのだ。したがってあなたは欲情する。自然なことだね。
……なるほどねえ。制服を着ただけでねえ。人間とは変なことで欲情するものなんだな。